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第6話
「わ〜!良い匂いしてきましたね」
「もう出来上がりじゃない?お皿に移しちゃうわね🎵」
「はい、お願いします!」
盛り付けはマダム達にお任せし、いよいよ試食の時間。
調理台の横に丸椅子を持ってきて、各グループで食べ始める。
「「「いただきま〜す」」」
パリッとした焼き目と、ジューシーな肉汁もさることながら
普段食べるものよりもひだが多いせいか
生地がもちもちしていて、新しい食感だ。
「うまっ…!」
「苦労して包んだ甲斐があったわね〜」
「ほんとほんと」
焼きたての熱さに苦戦しながらも、箸が止まらない。
視線を感じてふと横を見ると、及川さんがじっとこちらを見ていた。
「あっ、恥ずかしいところをお見せしてすみません。美味しくてつい」
思わず箸を引っ込めて謝る。
ひとりでがっつき過ぎてしまった。
穴があったら入りたい気持ちだ。
「いえ、美味しそうに食べてるなと思って微笑ましく見ていました」
顔色ひとつ変えずに及川さんが言う。
「遥希くん、いつも美味しそうに食べるわよね」
「かわいくてつい見惚れちゃうの分かるわ〜🎵」
「もう!揶揄わないでくださいよ!」
いつも通り賑やかに話が進み、レッスンも終わりの時間に。
「皿洗いぐらいはさせてください」と宣言し
及川さんが率先して手伝ってくれた。
シャツを腕まくりしただけでマダム達にキャーキャー言われているが
気にせずに黙々と皿を洗う及川さん。
その状況がなんだかおかしくて、俺もつい笑ってしまった。
後片付けを終えた後、食べきれなかった分の餃子は各自持ち帰ることになった。
「こんなにたくさん!助かるわ〜」
「これから息子が帰る時間だからちょうど良かったわ🎵」
「俺もビールのアテになるから嬉しいです!」
マダム達と談笑していると、話題は及川さんの方へ。
「亮磨くんは一人暮らしなの?」
「はい、そうです。自炊がほとんど出来ないので、今日はお土産があって助かりました」
「あらそうなのね。ここでたくさん覚えられるといいわね☆」
「色々と勉強させていただきます。」
表情の変化はないものの、マダム達の会話もそつなくこなし
初回にも関わらずすっかり馴染んでいる様子だ。
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