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姫宮も時間さえあれば観てしまうそれを、しかし大河が了承するはずもなく、聞こえてないかのように観続けていた。
「無視はいけないんですよ〜。ね、ママさま」
「あ、はい······」
「ほらほら、ママさまが『小口さんがテレビで観たいと言っているのだから、そうしてあげないとママ、大河のこと嫌いなっちゃうよ』って言ってますよー。いいんですか、大好きなママさまに嫌われても」
「⋯⋯」
一言もそう言ってないのですけど、と言いかけたが、それは野暮かもしれないと何も言わず、どちらにせよあからさまな嘘にも大河が耳を貸すはずもなく、テレビに目を向けたままだった。
一方的に小口が何か言っても、大河は無視し続けてしばらくした後。
来客を告げるチャイムが聞こえた。
瞬間、飛び上がった大河が安野《あんの》よりも先にインターホンへと走っていった。
ところが、大河の身長では画面すら見えなく、それでも大河はどうにか見ようと飛んだり跳ねたりしていた。
そうしているうちに安野がやってきて、手助けをしようとしたのだろう。「抱っこしましょうか」と両手を差し出したが、すぐに離れ、姫宮の元へ帰ってきた。
「やっぱり拒まれてしまいましたか⋯⋯」
「まあ、それはそうでしょうね。熊に襲われるようですもんね」
「私は熊ではありません!」
「じゃあ、牛ですかぁ〜」
「牛でもありません!」
「余計なことを言ってないで、仕事をなさい!」と一喝する安野に対し、「わたしに構ってないで、来客対応したらどうです?」と言われ、ハッとした安野はインターホンに一言告げ、その足で玄関へと飛び出していった。
「大河さまもあのぐらい反応してくれないと、構い甲斐がないじゃないですか」
「あ、はは⋯⋯」
顔を埋めて、何も反応しない大河の代わりのように姫宮が苦笑していると、扉が開かれた。
「大河様、伶介様がいらっしゃいましたよ」
「たーちゃん、こんにちは!」
「お邪魔します」と一歩後ろにいた玲美に対し、姫宮が軽くお辞儀をしている時、大河は伶介の姿を見かけるや否や、走り出した。
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