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嘆くように吐露した袋田に、「そう、なんですね⋯⋯」としか返せなかった。
普段は御月堂という、誰もが知っているような大手企業の人を命張って守っている職業だ。
想像力が欠けていた姫宮は言われて初めて気づいたその仕事柄に、ふと疑問が浮かんだ。
何故、それを犠牲にしてまでそれをしようとしたのだろうか。
「⋯⋯あの、どうして、この仕事を⋯⋯?」
「聞きたいですか?」
「⋯⋯え⋯⋯はい⋯⋯」
聞いてはならないのだろうか。そう思ったのも「あんま面白くない話ですよ」と言ったことで、そんなことを考えたのは一瞬で打ち消された。
「⋯⋯昔、ちょおっとヤンチャをしてたんっスよ。度胸試し的な? その辺にいる人の金もんを盗んでみようぜってその場のノリで、目に付いた知らない人のものを盗ろうとしたんです。そしたら、物陰にいたらしい今の俺みたいな人にあっという間に! 気づけば地面に顔が付いてたぐらいに!は? 何事って思いましたね」
はは、と軽い調子で笑った袋田は話を続けた。
「マジでえぐいぐらい動かんし、動かそうにも全然動かんしで、やべぇ〜と思ったんすけど、そこまでして雇い主を守るのかっけぇーって急に思って、それがきっかけでやろうと」
そう思った当時の袋田は、その取り押さえた護衛に「弟子入りさせてください!」と頼み込んだのだという。
急にそんなことを言われると思わなかったその人は、拍子抜けしたものの、「やれるものなら」とひとまず受け入れた。
ちゃんと償ってからなと添えて。
悪いことから始まったきっかけだったが、今は誰かの命を守るために命懸けでやり遂げている。それは並大抵では出来ないことで、すごいと素直に思う。
「いつも守って下さり、ありがとうございます」
「へへ、そう言っていただけて嬉しいっす」
照れくさそうに笑っていた。
代理出産をしていた時、こうやってお礼を言われたことがあったような気がした。
そういう時は今の袋田のようにやりがいを感じられたものだった。
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