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御月堂side
仕事の小休憩として、珈琲のお供にクッキーを口にしていた。
そのクッキーは、「姫宮様からのお土産です」と松下を通じて贈られた、水族館のクッキーだった。
松下の子どもが話題にしたことで行ったという水族館は、途中不審な人物によって不快な思いをしたようだったが、結果的に楽しく終えたという話だ。
誰一人も傷を負うことなく、仕事を成し遂げた袋田は姫宮達を家まで無事に送り届けた後、改めて事情聴取に受けに行ったという報告をした。
『いや〜こういう形でまた警察にお世話になるとは思わなかったですね!で、姫宮様を怪我させることなく仕事したんで、別に金をくださいよ〜!』
と、調子に乗る袋田に逆に給料を半減してやろうと思ったことはさておき。
松下の妻である玲美を襲おうとした犯人は、ただ単に襲おうとした迷惑極まりない人物だったようで、姫宮達とは関係ない相手という。
そして、御月堂も関係なかった。
法的処罰を受けた相手がいなくなって安堵をしていたが、どうやらそうもいかないようだ。
立場的に狙われるのは自分かと思っていたから余計に。
「御月堂様、何やら眉間に皺を寄せてますが、そのクッキー、口に合いませんでしたか? せっかくお二方が選んでくださったというのに」
「いや、そういうわけでは⋯⋯。⋯⋯お前のところの妻子が無事で良かったな」
「お気遣い心嬉しく思います。⋯⋯本当に! 無事で良かったと思いましたよ⋯⋯! 今回は袋田さんがきっかけで行くことを知りましたけど、普段は事後報告なんです! 息子を独り占めしたいからって酷くないですか! ⋯⋯知らず知らずのうちに悪いことが起きていたというと、後味悪いです」
当たり障りなく掛けた言葉が火をつけてしまった。いつものように熱が入るかと思ったそれは、消えそうな火のように急にしゅんとした。
その言葉は、確かに共感を得るものがある。
普段の日常は主に安野から、外出する際には袋田からの報告があるが、それでも楽しくやれているかと心配事があるというのに、どこに悪いことが起きるか分からないと思うと、落ち着いていられない。
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