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突破口を開く 2
ノエルはそこからすばやく動き、先輩治療士のマントから、怪しげな薬品が入った瓶を、全て取り出した。
そして、火薬が並べられたスペースへと向かい、小さめの砲弾をみつけた。
「ちょっと、危ないって…!」
「リンデジャック君!?」
ノエルの突然の行動に、コニーとエミンは困惑しながら不安気に声をかける。
ノエルはそんな2人の不安を余所に、砲弾を抱え出入り口のドアの前に置いた。
そして、先輩から回収した薬品の1つを手にとって、蓋を開けて匂いを嗅いだ。
「なんか、いろんな成分が入ってるな…自然発火するタイプっぽい」
ノエルはそう呟くと、中の液体を軽く振ったり、色味を観察する。
「まさかと思うけど…」
コニーの顔がさーっと青ざめる。
エミンも、どうか違っていてほしいという思いでノエルに尋ねる。
「…爆発させて、ドアを吹き飛ばそうとしてるとかじゃないよね?」
ノエルは手のひらに何を書き付けるような仕草をしてブツブツと呟きながら考えこむ。
そして、2人に向き合った。
「ピンポイントでドアだけ吹き飛ばすような威力に抑えて、周りに引火しないように注意すれば…頭の中の魔術式では上手くいってるから大丈夫だと思う」
コニーとエミンは恐ろしいことを言ってのけるノエルの様子に凍りついた。
ノエルはいざと言う時に守れるように、コニーとエミン、それから先輩治療士を庇うように立ちはだかり、薬品の入った瓶を数本まとめてドアに向かって投げつけた。
ードォーンッ!!!
ドアにぶつかった瓶が割れ、中の薬品と砲弾の化学反応により爆発が起こり、ドアは周りの壁ごと外に吹き飛んでいった。
パラパラと、砂が落ちる音が聞こえる。
ノエルは、爆破の衝撃を受けないように、持てる魔術の限りを尽くして、防護魔術を自分たちの周りに施していた。
「…ふぅ。さすが討伐部隊に収容されている砲弾、小さくても凄い威力だ…。他の火薬に引火もしてないし良かった。2人とも、もう大丈夫、出られるよ」
ノエルがそう2人に話しかけると、コニーは呆然と呟く。
「えっ…この状況って大丈夫って言えるの…?」
「大丈夫どころか、大問題なんじゃ…」
エミンも青ざめながら、コニーに同調する。
すると、爆発音を聞きつけたくさんの人が集まってきた。
「…ノエル!?」
緩やかなウェーブのかかった金髪に、アクアマリンの瞳を持つ、討伐第2部隊隊長リッツェン・ロイスタインが、爆発があった現場にノエルの姿を見つけ、驚きの声をあげた。
リッツェンの後ろから、討伐第3部隊隊長メイ・ホルンストロームも駆けつける。
そして、第2武器収容庫の扉が爆破された事態を見て、耽美な顔に青筋を立てながら怒りの声をだす。
「…一体何をどうしたらこうなるんだ!?」
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