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お仕置き 2

ノエルとリッツェンだけが執務室に残された。 「…えっと…僕もその…救護室に…?」 ノエルは自分もエミンたちと同じように、救護室に行って治療を受けられるものと思って、リッツェンにおずおずと尋ねた。 リッツェンは、執務机から離れ、ノエルの座っているソファーに腰を下ろした。2人は横並びに座ったかたちで向き合う。 「ノエル…君は救護室に行く必要はないよ。ここで私が治療する。無茶したお仕置きだよ」 「えっ…?」 戸惑うノエルに、リッツェンは微笑みかけた。アクアマリンの瞳がきらりと光る。いつものような温かく包み込むような表情ではなく、どこか苛立ちのようなものを含んでいた。 そして、リッツェンは、ノエルの頬に手を乗せ、林檎色の小さな唇を親指でなぞった。 「口を開けて」 いつもとは違うリッツェンの有無を言わせない雰囲気に押され、ノエルは言われるがままそっと口を開ける。 「んっ…」 ノエルの口に齧り付くように、リッツェンの唇が重ねられた。リッツェンの舌が、ノエルの口腔を這い回り蹂躙する。 「はっ…うんっ…まって…」 上手く息継ぎができずノエルが、一旦止めてもらおうとギュッとリッツェンの纏っている深紅のマントを掴む。リッツェンは、そんなノエルにかまわず、ソファにそのまま押し倒す。 押し倒してからもリッツェンは夢中でノエルの唇を味わっていた。 「…あっ、ごめん…普通にキスしちゃった…」 リッツェンは、自身の魔力をノエルに流すことを忘れていたことに気がついた。押し倒したノエルの顔を上から見下ろす。アクアマリンの目が淫靡な色を孕んで光る。 リッツェンの唇がちゅっと音を立てて、ノエルの顔のあちこちに何度も落とされる。 ノエルの薄茶色に緑が差し込んだヘーゼルナッツの色の瞳が反射で閉じられる。 「はぁ…可愛いな…。君を前にすると、頭が上手く働かない…気になって仕方ないんだ」 リッツェンは、切なげに吐息を吐くと、再びノエルに口付けをする。今度は魔力の交換になるように自身の魔力を流し込む。 「っ…!!」 リッツェンの魔力がノエルの身体に流し込まれる。自分の魔力をほとんど使い果たしてしまったノエルの身体は、本能的にリッツェンの魔力をもっともっとと欲しがった。 ノエルは自ら舌を使ってリッツェンの舌を吸う。もっと貴方の魔力を頂戴というように、小さい健気な舌がリッツェンの口の中で強請るように跳ね回る。 そんなノエルの様子に、リッツェンの理性は崩壊しかけた。このままノエルをどこかに閉じ込めて、無理やり身体を暴いて、己の欲望で貫いて自分の匂いと魔力でノエルを塗り固めたい…リッツェンはそこまで想像して、唇を離した。 「いやっ、もっとして…!」 ノエルはリッツェンの魔力に酔って軽い酩酊状態になっていた。もともとの魔力が多いからか、ノエルの身体は魔力に敏感に反応する。魔力の交換により、甘い快感がノエルの身体に走る。 「はいはい、待っててね。毒を中和する薬を飲ませてあげる」 リッツェンはなだめるようにノエルの榛色の髪を優しく撫でた後、マントの内ポケットから聖樹の葉で精製された薬の入った瓶を取り出した。

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