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聖女の息子 2

「えっ、聖霊さん…!?見に行ってくる!」 カレンはパラビナ王国に居る聖霊たちに慕われており、時々知り合いの聖霊がカレンに会いに訪れていた。 通常は、魔力の高い者がやっと聖霊の気配に気づいて、僅かに白く光っているのを認識できる程度だったが、カレンは精霊たちの顔を見分けることができる程認識できる能力を持っていた。 「カレンさんっ…ノエルさんはまだ5歳になったばかりで…1人で遠くまで行くのは危ないです」 ハンナは心配そうにそう言い、カレンが教えた方向に走っていったノエルを追いかけようとした。 「大丈夫だよ。聖霊が守ってくれる」 カレンはにこっと笑ってそう言い切った。 カレンの声は元気そうだが、その顔色は血の気がなく、真っ白だった。 カレンは自身の死期が目前なのを感じ取っていた。 * 「聖霊さん…?」 ノエルは、幹の真ん中あたりがわずかに白く光った幼木をみつけた。 「あら?カレンの子、ノエルだね」 聖霊は気まぐれで、気が向いた時にしか人間に声をかけない。 ノエルはカレン程に聖霊を認識することはできなかったが、多くの聖霊に「カレンの子」と覚えられており、会話を許されていた。 「ママの病気、悪くなってるみたい。聖霊さん、どうしたら良くなるかな?」 「うーん…カレンが話しちゃダメって言うんだ。悪いけど、我々からは何も言えないよ。それにね、もうカレンには、抗う力が無くなってしまった」 「あらがう…?」 「ノエルには難しかったね。あの魔女がカレンを呪った時に残した痕跡がカレンの身体に残ったままだからね…」 「魔女!?そんな悪いやつがいるの?ママを攻撃してるの?」 ノエルは物語などによくでてくる「魔女」と言う存在は知っていたが、本当に居るとは思わず、聖霊に尋ねた。 パラビナ王国では人々はみな魔力を持つが、物語の中で悪いことをする存在を「悪魔」や「魔女」と表現することがあった。 「…もうダメだって。話しすぎてカレンに怒られてる」 どうやらカレンは距離が離れてても聖霊と会話することができるらしい。 「さぁ、ノエル。こっちにおいで。加護をあげよう。君が元気に成長するように」 ノエルは、白く光る聖霊に近付いた。聖霊が何かを唱えると、ノエルの身体が温かい光に包まれる。 ノエルの榛色の髪が一瞬黒く光って、加護の光が消えるのと同時にいつもの榛色の髪に戻る。 「僕の髪、聖霊さんの加護をもらう時だけ黒く光るんだ。ママと同じ髪になる。僕、ずっとママと同じ髪の色がいいなぁ」 「その榛色は、ノエルを守ってるんだ。だからそのままでいいんだよ」 ノエルは聖霊にそう言われ「ふぅん」と自分の髪の色を確認した。 いつもと同じ、榛色の髪が、太陽の光に照らされてキラキラと輝いていた。

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