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踊れません 2

「ステージで踊るって、そんなの無理ですよ…僕は治療か魔術しかできないし…」 ノエルの顔は相変わらず白いままだ。自分が、メイド服を来て踊っている姿など、まるで想像もつなかった。 「ノエルがこう言ってる以上、俺も反対します。ノエルが嫌がることは、俺もやりたくないです」 エミンははっきりとそう伝える。 「まぁ、僕は踊れはするけど、1人ではやりたくないな。あと、この衣装もないなぁって思います」 コニーも、やわらかく笑いながら、衣装を否定する。 とにかく、一度持ち帰って考えてほしいとベテラン治療士たちに懇願され、本当に言葉通り衣装であるメイド服を持たされてしまった。 ノエルはラボに立ち寄るからと、コニーとエミンと別れ、1人廊下をトボトボと力無く歩く。 「…無理だって…」 ノエルは半ば押し付けられるように持たされた衣装をギュッと握ると、大きなため息をついた。 エミンもコニーもノエルが無理だという気持ちを尊重してくれていた。 気を遣わせているような申し訳なさも感じている。すると突然後ろから声をかけれた。 「そこの…新人!」 ノエルは振り返る。ルビー色の瞳が、真っ直ぐこちらを見ていた。 ノエルを呼び止めたのは、討伐第3部隊隊長メイ・ホルンストロームだった。

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