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教えてあげる 1

ノエル達は、談話室で出し物について、大体の方向性を話し合った後、ベテラン治療士達を訪れ、用意したくれたメイド服を返すと共に、他の出し物を考えたので、協力してほしいとお願いをしに行った。 音や光の調整を含めたステージの準備、時間枠の確保、予算取り等、ノエル達が想像しているよりも、意外に多くの人手が必要だということがわかった。 ベテラン治療士達には「ありがとう…!!素晴らしい企画だと思う。これで激励賞は確実だ!」とお礼を言われ、共に頑張ろうと声をかけられた。 その後、ノエル、コニー、エミン、ニックの4人は食堂で夕ご飯を一緒に食べようとなった。 食べ終わった後、コニーとエミンはそれぞれ自室に戻ったが、ニックは用意された部屋に戻ろうとせず、不安そうな表情でノエルに相談を持ちかけた。 「ベッドが変わると寝れないカモ。明日は会議で上席の人達に鍵の仕組みについて発表しなきゃならないのにどうしよう…ノエルちゃんと一緒だったら、慣れてるし寝れるかも…」 「えっ…!それはきちんと睡眠とらないと…!僕の部屋のベッド小さいけど、一緒に寝る…?」 寮生活の中でも、不眠症気味のニックが、ノエルのベッドで一緒に寝ると眠れることがあったため、ノエルは自然にそう提案する。 一緒のベッドで寝るといっても、もちろん、エッチなことは一切しなかった。 そういう事になったのは『魔術の交換』について教えてもらったあの1回だけだ。 ノエルのお許しを得たニックは、既に自分の荷物を持ってきていて「お邪魔しまーす」とノエルの部屋に入る。 「王立魔術師団学校の寮の部屋より一回りくらい狭い感じだネ。あっ、すごい、シャワーもついてるんだ。ねぇ、ちなみに、この部屋に誰か入れたことはある…?」 ノエルの部屋をキョロキョロ見回してから、ニックはノエルに尋ねた。 「ううん、誰も来たことない。コニーとエミンはそれぞれ同じ並びに個室があるけど、お互い部屋の中までは入ったことないし…」 「――ファーストキスは?誰かとした?」 ニックの狐目が珍しく見開かれ、ノエルを見つめる。ノエルは突然話題も表情も変えてきたニックの雰囲気にドキリとする。 「それが…討伐第1部隊の隊長さんが、ヒュドラに襲われて瀕死状態になった時に、魔力の交換をしたんだ。その時咄嗟に…」 「キスだけ?他は?」 「その時はキスだけだったけど…その後、魔力枯渇状態になった時があって、別の部隊の隊長さんに魔力の交換をしてもらったんだ…ただ…せっかくニックに教えてもらったのに、まだその…最後まではできてない」 「ふぅん…そっか。さっき、食堂で聞いたけど、特別機動部隊だっけ…?任命されたんデショ?そこでノエルちゃんなら声がかかるんじゃない?」 「うん、実は、誰にも言ってないけど、魔力の交換をしてほしいとは言われてる」 ニックは、空気を和らげるためか、ノエルにいつもものように笑いかけた。 「精霊に会うために…だったね。上手くいくといいね。…もう遅いし寝ようか」 ノエルは、問い詰めるようなかたちで質問攻めをしてきたニックの様子に一瞬戸惑ったものの、いつもの雰囲気に戻ったので安心し、ニックのための枕を出すなど寝る準備をはじめた。 * 話は、半年程前に遡る。 ノエル・リンデジャックとニック・ハーヴィは王立魔術師団学校の3年生として、王都エンペラルの3年生専用のキャンパスで実施の研修を受けていた。 ノエルは治療士、ニックは魔術士になるためのコースを選択していたため、実習先はそれぞれ別だったが、タースルの学校時代の寮と同様、2人は同室だった。 「ただいま~。魔術士コースはノエルちゃんもいないし、ホント退屈。……ん?お金なんて机に広げて何してるの?」 ニックが魔術士の実習から寮の部屋に戻った時、ノエルは机に座って何か難しい顔をしながら考え込んでいた。 「セックスを教えてもらうには…一体いくら払えばいいのかと思って…ニック、知ってる?」

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