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ガーターベルト 3
ノエルは後ろから声をかけられて振り返った。
討伐第1部隊隊長ランドルフ・ヴィクセンは目を見開いて驚いている。
「っ…その格好は…!?」
「ランドルフ隊長!えっと…壮行会の出し物をすることになりまして…」
「出し物か!そうか…ノエルは新人だもんな。それでその格好をして…なるほど…?」
ランドルフは、ノエルの格好をまじまじと見つめる。ノエルはガーターベルトが外れたストッキングを片手で押さえ、もう片方の手にステッキを持った状態だった。
「もしかしてそれが外れて困ってたのか?」
「はい…今日初めて付けたので、仕組みがよくわからず…」
ランドルフは、ノエルの状況を把握して、ふむと頷き、すぐ近くの部屋を指さした。
「すぐそこに、俺の執務室がある。そこでつけようか」
ノエルが返事をするより先に、ランドルフはノエルを横抱きにする。
「わっ…!!」
「その靴は歩きにくいだろう。すぐそこだから」
ランドルフはそう言って、ノエルをお姫様抱っこで自分の執務室まで運び、執務机の上にノエルをそっと置いた。
「見せて」
ランドルフの紺色の髪がさらりと揺れる。エメラルドの瞳がノエルを捉える。
ノエルはスカート裾を少しだけ上に上げ、下がったストッキングを引っ張った。
「ここに、このベルトの先を引っ掛けて留めるみたいなんですが…」
「ベルトは2つあるんだな…留めるのはこの位置でいい?」
ランドルフはノエルにそう確認し、ぱちんとベルトを留める。もう一つのベルトも同じように留め、ノエルの顔を見る。
「これで大丈夫だろう」
「ありがとうございます!申し訳ありません…隊長にこんなことさせてしまって…」
「いいよ、討伐第1部隊は、俺も含めて役付もみんな雑用を進んでやるし、そういう雰囲気だから、隊員達も、割となんでも俺に頼んできたりする。まぁ、ガーターベルトを留めたのは初めてだけど」
ランドルフは「すみません…」と気不味そうに小さくなっているノエルの頭にポンと手を置く。
「ノエルが配属してくるのが楽しみだよ」
ノエルは先日、討伐第1部隊に配属が決まった。コニーとエミンも同じ部隊に配属されたため、発表時、3人で喜び合っていた。
「はい、討伐第1部隊でお世話になります。精一杯頑張る所存です」
「明日から開始される特別機動部隊は、部隊横断で役割を持って動くが、通常の任務に戻れば、部隊毎に訓練等することになる。よろしく頼む」
ノエルは「よろしくお願いします」と深々と頭を下げた。
そして、執務机から降りようとするノエルを静止して、今度はランドルフが気不味そうにノエルに尋ねる。
「その、非常に聞きにくいんだけど…さっき、後ろから屈んでいるノエルの…その…尻が見えていて…まさか下着を履いてないとかではないよな…?」
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