54 / 63

ガーターベルト 3

ノエルは後ろから声をかけられて振り返った。 討伐第1部隊隊長ランドルフ・ヴィクセンは目を見開いて驚いている。 「っ…その格好は…!?」 「ランドルフ隊長!えっと…壮行会の出し物をすることになりまして…」 「出し物か!そうか…ノエルは新人だもんな。それでその格好をして…なるほど…?」 ランドルフは、ノエルの格好をまじまじと見つめる。ノエルはガーターベルトが外れたストッキングを片手で押さえ、もう片方の手にステッキを持った状態だった。 「もしかしてそれが外れて困ってたのか?」 「はい…今日初めて付けたので、仕組みがよくわからず…」 ランドルフは、ノエルの状況を把握して、ふむと頷き、すぐ近くの部屋を指さした。 「すぐそこに、俺の執務室がある。そこでつけようか」 ノエルが返事をするより先に、ランドルフはノエルを横抱きにする。 「わっ…!!」 「その靴は歩きにくいだろう。すぐそこだから」 ランドルフはそう言って、ノエルをお姫様抱っこで自分の執務室まで運び、執務机の上にノエルをそっと置いた。 「見せて」 ランドルフの紺色の髪がさらりと揺れる。エメラルドの瞳がノエルを捉える。 ノエルはスカート裾を少しだけ上に上げ、下がったストッキングを引っ張った。 「ここに、このベルトの先を引っ掛けて留めるみたいなんですが…」 「ベルトは2つあるんだな…留めるのはこの位置でいい?」 ランドルフはノエルにそう確認し、ぱちんとベルトを留める。もう一つのベルトも同じように留め、ノエルの顔を見る。 「これで大丈夫だろう」 「ありがとうございます!申し訳ありません…隊長にこんなことさせてしまって…」 「いいよ、討伐第1部隊は、俺も含めて役付もみんな雑用を進んでやるし、そういう雰囲気だから、隊員達も、割となんでも俺に頼んできたりする。まぁ、ガーターベルトを留めたのは初めてだけど」 ランドルフは「すみません…」と気不味そうに小さくなっているノエルの頭にポンと手を置く。 「ノエルが配属してくるのが楽しみだよ」 ノエルは先日、討伐第1部隊に配属が決まった。コニーとエミンも同じ部隊に配属されたため、発表時、3人で喜び合っていた。 「はい、討伐第1部隊でお世話になります。精一杯頑張る所存です」 「明日から開始される特別機動部隊は、部隊横断で役割を持って動くが、通常の任務に戻れば、部隊毎に訓練等することになる。よろしく頼む」 ノエルは「よろしくお願いします」と深々と頭を下げた。 そして、執務机から降りようとするノエルを静止して、今度はランドルフが気不味そうにノエルに尋ねる。 「その、非常に聞きにくいんだけど…さっき、後ろから屈んでいるノエルの…その…尻が見えていて…まさか下着を履いてないとかではないよな…?」

ともだちにシェアしよう!