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慣れるため 2
ノエルは上目遣いで、ランドルフをじっと見つめる。
「うっ…だから、その目は…」
ランドルフは口元を押さえながら「反則だろう…」呟く。そしてノエルに尋ねた。
「慣れたいって…セックスは経験あるんだったな…キス以外の魔力の交換は?」
「無いです」
討伐現場では、若い治療士がその身を差し出して魔術騎士と『魔力の交換』をすることがある。そうすることで傷が癒えたり、戦闘力か増したりするのだ。
魔術のスキルが高くない治療士は、安易にその方法に走りやすい。そのため、魔術騎士や魔術士は治療士を男娼と呼び、蔑んだ。このような職種間の差別は、隊の秩序を乱すことに繋がる。
ランドルフが隊長の地位に就いてからは、そのようなことが無いように、安易な性行為による『魔力の交換』は禁止していた。
今回の3部隊で構成された討伐統合部隊でも、討伐第2部隊隊長リッツェン・ロイスタインと討伐第3部隊隊長メイ・ホルンストロームが同じ考えであった為、引き続き同じ方針でいる。
ただ、今回の特別機動部隊では、病魔ウィルス立入制限区域レベル6という未開の地に進行することと、S級の魔物に遭遇する危険があるため、特例でノエルに『魔力の交換』の指令が下った。
ランドルフとしても、自分と相性が良い魔力を持つノエルとの『魔力の交換』が、どれほどの効果をもたらすのか確かめたいところではあった。今回は隊長として、簡単に死にかけるわけにはいかない。
何より…ゆるく勃ち上がってしまったノエルの下半身の責任をこの場でとらなければならないだろう。このまま、部屋の外に出すわけにはいかない。ノエルの熱を鎮める役目は誰にも譲りたくなかった。
そんなことを短い一瞬の間で考えたランドルフは、ちらりと執務室の時計に目をやる。
「さすがに、最後までは無理だろうけど…慣れるためにも、キス以上の『魔力の交換』をしてみようか?…ただし、誰とでもこんなことをするわけじゃない。ノエル、君とだからだ」
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