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白い幻獣 2

「あの子がやっと出てきたぞ!」 「3人とも、ものすごく可愛いよなぁ…」 「あんな形の白い光は見たことが無いっ!すごい!」 会場からそんな声が聞こえてくる。 ノエルは観客側の隊員達に向って、にこっと笑いかけた。これから何をするのだろうという期待で会場内がどよめく中、ノエルはステッキを掲げた。 ステッキの先に、エミンとコニーが作り出した光の泡が集まる。その光を、今度はステージの真ん中にある大きな球型のボウルの中に押し込めた。 コニーと、エミンは、ボウルの両側に立ち、さらにその中に治療魔術を流し込む。ガラス製のボウルはあっという間に白い光で満たされた。 ノエルが、ステッキをさらに高く掲げ、歌うように詠唱すると、ボウルの中に集められた白い光が大きな丸い塊となって、少しずつ宙に浮かび上がってくる。 ガラスの球型ボウルから大きな白い光の塊が全て出ると、ノエルは、その光の塊にステッキを向けた。 「――白鷺火(しらさぎび)…出てきてっ…」 ノエルが魔力を込めてそう唱えると、ボンっという大きな破裂音と共に、白い光できた大きな鳥が現れた。 ステージ袖から「やった!成功だ!!」という声が聞こえ、治療士数人が手を合わせて喜んでいる。 ステージ上のコニーとエミンも安心して笑みを浮かべた。 「すごい…!!あの白い鳥は…幻獣か?」 「救いの白い光を放つという、白鷺火だ…!!」 隊員達の歓声が場内に響き渡る。 ノエルが作り出したのは、白鷺火とよばれる伝説の幻獣だった。万病を癒やす力があると言われ、目にすると幸運が訪れるという言い伝えがある。 ノエルは無事にイリュージョンが成功したと安堵し、ふぅっと息を一つ吐いて、大きな鳥の形をした白い光を見た。 「――あれ?なんかいつもと違う…」

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