60 / 63
白い幻獣 2
「あの子がやっと出てきたぞ!」
「3人とも、ものすごく可愛いよなぁ…」
「あんな形の白い光は見たことが無いっ!すごい!」
会場からそんな声が聞こえてくる。
ノエルは観客側の隊員達に向って、にこっと笑いかけた。これから何をするのだろうという期待で会場内がどよめく中、ノエルはステッキを掲げた。
ステッキの先に、エミンとコニーが作り出した光の泡が集まる。その光を、今度はステージの真ん中にある大きな球型のボウルの中に押し込めた。
コニーと、エミンは、ボウルの両側に立ち、さらにその中に治療魔術を流し込む。ガラス製のボウルはあっという間に白い光で満たされた。
ノエルが、ステッキをさらに高く掲げ、歌うように詠唱すると、ボウルの中に集められた白い光が大きな丸い塊となって、少しずつ宙に浮かび上がってくる。
ガラスの球型ボウルから大きな白い光の塊が全て出ると、ノエルは、その光の塊にステッキを向けた。
「――白鷺火 …出てきてっ…」
ノエルが魔力を込めてそう唱えると、ボンっという大きな破裂音と共に、白い光できた大きな鳥が現れた。
ステージ袖から「やった!成功だ!!」という声が聞こえ、治療士数人が手を合わせて喜んでいる。
ステージ上のコニーとエミンも安心して笑みを浮かべた。
「すごい…!!あの白い鳥は…幻獣か?」
「救いの白い光を放つという、白鷺火だ…!!」
隊員達の歓声が場内に響き渡る。
ノエルが作り出したのは、白鷺火とよばれる伝説の幻獣だった。万病を癒やす力があると言われ、目にすると幸運が訪れるという言い伝えがある。
ノエルは無事にイリュージョンが成功したと安堵し、ふぅっと息を一つ吐いて、大きな鳥の形をした白い光を見た。
「――あれ?なんかいつもと違う…」
ともだちにシェアしよう!

