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第60話 欲しがりなのに

 さすがに、それは。 「ダメ、ですかっ? そのっ」  けど。 「その……」 「……」 「感じて、みたい……翠伊くんの、ダメ?」 「ほんと、桜介さんってさ」 「?」 「落とし方、教えてって言ってたけど、いらなくない?」 「?」  こういうのを、どハマりっていうんだろうなぁって、じっと、切なげに俺を見つめる瞳に、苦笑いをこぼした。それから、額をコツンって、合わせて。 「桜介さんにベタ惚れな彼氏にさ、そんなの」 「べ、ベタっ」 「言っちゃ、ダメだよ」  キスをした。捕まえて、さっきまで解してた中をもう一度、撫でて。 「ン」  桜介さんが気持ち良くなるポイントのそばを何度か指で擦ってく。 「ンンっ」 「このまま、桜介さん」 「あっ」  貴方が欲しくなるように、そこをちゃんと撫でて欲しくなるように疼かせてから、指を引き抜いて、腰をもっとしっかり引き寄せた。 「あっ」  そこに熱をあてがってから。 「あ、あっ」  そのままゴムで覆われてない、そのまま。 「ぁ、ンンンンンっ、ぁ、翠伊くんっ」  中をかき分けるように。 「あ、あ、翠伊くんっ」 「っ」  ゴム越しでもすごく気持ちいいのに。  何、これ。  やばい。  熱くて、トロトロで、けど狭くて、きつくて、絡みつくみたいに、しゃぶりつくみたいに、中が締め付けてくれる。 「っ、はっ」  息が勝手に乱れて、呼吸が勝手に熱を帯びてく感じ。  視覚的にもやばいんだ。  桜介さんがランジェリーの腰紐を片方だけ解けた格好で、足をいっぱいに広げて、俺と繋がりながら、ぎゅって抱きついてる。 「あ、あ、ど、しよ、翠伊くんっ、の、気持ち、ぃ、あ、ひゃぁ……ン」 「っ」  甘い声を溢しながら、中をもっと刹那げに絡みつかせて、前をとろとろに濡らして、ピンク色の乳首を硬くさせてる。ね、これ。 「桜介さんの中、やばい」 「あ、あ」  思わず、そんなことが独り言みたいに溢れた。  ゆっくり貴方の奥まで到達すると、充足感に頭の芯が痺れてく。 「翠伊くんっ」  気持ち、ぃ。 「あ、の」 「?」 「翠伊く、ン」  桜介さんが俺のことをぎゅっと抱き締めながら、熱の染み込んだ吐息が唇に触れるのを感じるくらい近くで、小さく小さく呟いた。 「僕、のは、気持ち、ぃ? あの、僕、翠伊くんのこと、気持ち良く、できてる?」  そう、小さく囁いて、中がきゅっと締め付けた。 「ヤバいくらい、だよ」 「ぁ、ン、嬉し」  まるで全身で、奥で、抱きつかれると、自分のって言われてるみたいで。 「桜介さんが好きに動いていいよ」 「あ、ぁっ」 「たくさん、気持ちよくなって」  嬉しくて、満足感がすごくて、なんか……たまんない。 「あ、あっ」  桜介さんが自分から腰をくねらせて、自分の気持ちいい場所を探してる。慣れない腰つきで、でも、夢中になって甘そうな唇を何度も噛み締めながら。 「ここ、桜介さんの」 「っ、あ、あぁ、んっ」 「ね?」 「あ、あ」  細い腰を両手でしっかりと掴んで、そのまま貴方の好きなところを擦ってあげた。クンって、腰を突き上げると、気持ち良さそうに甘い声を溢して、その唇の隙間から見える舌が柔らかそう。 「ンンっ」  深くキスをしながら、レースで片方だけ包まれたお尻に指を食い込ませた。 「ン、あっ……ふぁ……ぁ」  それから、乳首を甘噛みして。 「ひゃぁっ、ン」  乳首に歯を立てると中がまたさらに締め付けてくれる。  ねぇ、俺の方、なんだ。 「あ、翠伊くんっ」 「きつかったら、言って」 「あ、何っ」  夢中なのも、独り占めしたいのも。 「もっと奥まで、挿れてもいい?」 「あ、あ、そこっ」  入りたくなる。細いのに、華奢なのに、強く深くしたら、壊れちゃいそうに繊細なのに。 「ン、嬉し」 「っ」 「好き」  やっぱ、いらないと思うよ。  落とし方なんて、教わる必要なかったよ。 「あっ、あっ」  欲しくて仕方ないのは俺の方。  頭にそっと手を添えながら、つながったまま押し倒して、寝転んだこの人をきつく抱き締めてから腕に閉じ込めた。それから、もう一度深くキスをして。 「手、背中に回して、しがみついてて」 「ぁ……」 「爪立てて」 「あ……ン、っっっっっっっ」  一気に奥まで貫いた。 「あ、あ」  頭の中が真っ白で。 「あ、奥、にっ、あ、翠伊くんっ」 「中がイッてる」 「あ、あ、あ、だって、硬いっ」 「あのね、そういうの、言ったら」 「だって、ダメ、今、すごく」 「うん。めっちゃ中、うねってる」 「あ、ひゃっ、あ、大きいっ、あ」 「桜介さん」」  突き上げるとたまらなかった。 「あ、あ、あっ」 「桜介さん」 「あ、ダメ、気持ち、ぃ」  引くと、絡みついてきて気持ちよくて。 「やぁ……ん」  奥へ掻き分けて挿ると、ぎゅっと隙間なく締め付けられて気持ちよくて。 「あっ、あっ、あぁっ、あ」 「っ」  夢中になった。  夢中で、この人のことを捕まえて、抱き締めながら甘い声に煽られるままに、何度も、抉じ開けてく。  頭の中にあるのは、好きと、気持ちいい、の二つだけ。それが溢れるくらいに、ぐるぐる駆け巡ってる。  突き上げる度にベッドに響く濡れた音と、甘ったるくて、聞いてるだけで喉奥が熱くなる桜介さんの拙い喘ぎに煽られて、加減なんてできそうにないんだ。  呼吸の音がすごかった。  心臓の音もやばくて、暴れてる。  繋がったところが熱くて溶けそう。貴方に全部搾り取られそうで、けど、まだこの人の中を堪能したくて、ぎゅっと奥歯を食いしばった。 「あ、翠伊くんっ」  もっと、味わいたい。  奥まで、全部。 「あ、あ、あっ」  本当に好き。 「あ、ダメ、そこ、しちゃうとイっちゃうよ」  桜介さんの中、やばいくらいに気持ちいい。 「あ、翠伊くんっ」  ねぇ、マジで好き。 「あ、あっ」  桜介さんの中、マジで。 「あ、あ、っ」 「っっっっ」  最高に気持ちいい。 「っ、あっ…………すごい、ドクドクって」 「っ」  そう言って締め付けられて、腰が勝手に中を突き上げた。 「あ、ひゃンっ」 「っ」  そして、溢れる甘い悲鳴にまた、こめかみのがギリギリするくらいに、興奮して。  あぁ、もう、マジで。 「あ、翠伊くん……」 「っ、今、ちょっとタンマ」 「っ、ごめ、僕っ」 「違くてっ」 「……」  こんなにセーブ効かないなんて思わなかったんだ。 「桜介さん……」 「あ、や、抜いちゃ……」 「っ」  こんなに、セックスに夢中になるなんて、思わなかったんだ。 「あ……溢れっ」 「っ」  こんなに――。 「翠伊くん」 「やば、マジで……桜介さん」 「?」  こんなに。 「もう一回、してもい? 桜介さん」 「! う、うんっ、あの、僕も」 「っ」 「もっと、したい、よ」  こんなに好きな人とだと、自分が欲しがりになるなんて、思わなかったんだ。

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