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第65話 お仕事頑張ったから

 片道二時間、ちょっと長い。  そう思ったけど。  気がつくと、電車の窓の外は、もう慣れ親しんだうちの近くの風景に変わってた。  スマホで、色々建築のこと調べてた。午前中にあった打ち合わせで出てきた外装の材質のこと、一つ一つメモは取ってたから。  一級建築士がカッコ良すぎて、なんか、今、いくらでも吸収できそうな気がしてる。  だから、ぐびぐびと喉を鳴らして水を飲むみたいに、外装の材質を調べまくってた。それからいつも通りに、最短の最寄駅では止まらない電車に乗ってた俺は一つ手前の駅で降りて、今度は小走りで駆け出していた。  そして、そのまま荷物を置くこともせずに、隣の、桜介さんの部屋へと向かった。  一級建築士は遥か遠いけど、もっと勉強しないとだけど。  あんなふうになりたい。  なれる気が、あんましてないけど。  すっごくいい感じのアトリエだった。  朝は奥のデスクに日差しが差し込んでた。どんなに眠くてもあんなに明るく照らされてたら、目、覚めそう。  それで午前中、打ち合わせをしてる間はミーティングスペースのところ。俺が面接? っていうかほぼ談笑だったけど、ソファのところに日差しが当たる。  午後、製図作業とかの間はまた奥のデスクに戻るんだけど、その時は、きっとすごく集中したいんだと思う。日差しの眩しさが邪魔をしないようになってて。ふと、リラックスをしたくなったり、小休憩のためにコーヒーを淹れるんだけど、そのスペースに最後の日差しの欠片が差し込んでた。  全部、めちゃくちゃ緻密に計算されてる。  けど、どこかゆとりがあって、人間味があって、生きてる空間って感じがした。  あ、打ち合わせの様子とかもさ、初めて見たんだ。  もう頭の中に全部の材質だったり、技法とか入ってるんだと思う。何を訊かれても、スッと答えるんだ。すごくない?  あ、昼飯、奢ってもらっちゃった。  馴染みのパスタ屋があるからって、連れて行ってもらってさ。  個人経営の小さなイタリアンの店。ちょっと古ぼけてて、中にはテーブルが五つあるだけの小さなお店だったけど。美味かった。けど、片道二時間だから、桜介さんを連れては来れないなぁって思った。  そう桜介さん本人に言ったら、なんでか嬉しそうに笑ってて。  不思議で、首を傾げたら。 「あ、ダメっ、翠伊くんっ」 「うん、ここ、桜介さんの好きなとこ」 「あっ、ンっ」  だって、僕のことを思い出してもらえたなんて、嬉しい、からって。 「ひゃぁ……ン」 「っ、乳首にキスしたら、中が締まった」 「ン、だって」  可愛いことを言ってた。それだけでも、明日も仕事がある桜介さんを押し倒したくなっちゃうのに。 「気持ち、ぃ、あ、ああっ」  キスして引き寄せて抱き締めたら。抱き締めて腰のとこに手を置いたら、フリルのついた下着を家着の柔らかい布越しでも触れると、履いてるのがわかって。  もうそんなの、無理でしょ。 「あ、乳首、ダメっ」  背中を丸めて、桜介さんの中でもっと締め付けて欲しいって、乳首に丁寧に愛撫をする。ツンって尖った先端に歯を立てると、搾り取るみたいに中が絡みついて、頭の芯が痺れるくらいに甘い声にも鼓膜を刺激される。 「あ、ンっ、あ、あ、翠伊くんっ」  気持ちいいところを擦り上げながら、もう少し奥のところを抉じ開けると、ねだるように俺の名前を呼んでくれる。  キス、しながら、そこをトントンされたそうに。 「翠伊くぅ……ンっ、ん……んク……っ」  この時の声がめちゃくちゃ甘くて、やみつきになるんだ。  腕を伸ばしてくれるから、桜介さんを押し潰すことのないように肘をついて、身体をピッタリと重ねて、キスをする。 「ン……んっ」  舌を絡める濃厚なキスをしながら、奥のとこ。 「あっ、あぁっン……あ、あっ」  トントンって。 「あ、あ、あ、翠伊くんっ」  やば。  気持ちいい。 「あ、ン……」 「桜介さんの中、とろっとろ」 「っ、ン、ぁ」 「なのに、すっごい狭くて、締め付けてくる」 「あ、だって」 「気持ちぃ?」  訊くと、濃厚なキスで濡れた唇をキュッと結びながら、小さく頷いてくれるんだ。その拍子にコツンって額がぶつかって、「ごめんっ」って慌てて。その顔がまた可愛くてさ。 「ン、ん……」  たまんなくて、もう一度、深くキスをして、舌でたくさん桜介さんの舌と戯れ合ってから、わずかに唇を離すと、唾液の糸が繋がった。 「ぁ」  やらしいキスで唾液を交わした糸に桜介さんが真っ赤になった。なりながらぎゅっと俺の首にしがみついてくれる細い腕の付け根、柔らかい内側の一つ、キスマークをつけた。脇のちょっとズレたところ。 「あぁン」  キスマ付けると、また桜介さんの中が、やばいくらいに気持ち良くなる。熱くて、キュンキュンしてて。 「っ、桜介さんっ」 「あ、ン」 「っ」 「あ、あ、あ、ダメっ、激しいっよ」 「うん」 「あ、あぁっ、あっ」  この人の声も、仕草も、おねだりも、全部やみつきになる。もっと名前呼んでよ。もっと、気持ちいいって、囁いて。もっと欲しがって。 「あ、あっ」 「っ」 「翠伊くんっ、も、イッちゃうっ、あ、あぁ」 「俺も」  腰を掴んで、熱に潤んだ中を掻き分けて、奥を突いてく。 「あ、あ、イクっ、僕っ」 「っ」  頭、とろける。 「ひゃぁっ……ン、ん、あっ」  そのくらい気持ちいい。 「っ、桜介さん……」 「あ、翠伊くんっ、翠伊くんっ……も、ぁっ、っっっっっ」 「っ」  ぎゅって抱き付かれながら、俺もきつくこの人を抱き締めた。 「あっ」 「っ、桜介さんの、可愛いフリル、ドロドロ」 「っ、だって」  ずっと、この人と繋がってたいとか、思っちゃうくらいに気持ちいい。 「翠伊くん……気持ち、いい……」  明日も仕事なのに、もう一回したいくらい。 「あっ……ン」  たまらなく、気持ちいい。

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