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第67話 意地悪なのは、きっと
「ン……ん」
ほっぺたが赤くて、可愛いから抱き締めた。
「疲れて、る、んじゃないの?」
「全然、今、寝たから回復した」
「えぇ? たったの二十分くらいだよ? それに、明日だって、また早いのに」
「んー」
「ちゃんと寝ないと、ベッドで、じゃないと疲れ」
細い腰に両手を回して、引き寄せて、膝の上に乗せると、キスで赤みが増した唇をキュッと噛み締めてる。
「でも、桜介さん」
「っ」
諭す言葉を告げる唇が、あ! って開いて、それから、気恥ずかしそうに、肩をすくめた。そしてもっと真っ赤になったのは俺が桜介さんのお尻に手を置いたから。柔らかい、ルームパンツの上からでも、薄手だから気がつくよ。
「ぃ、一応、だよっ、と、とりあえず、その、もしも、する……ことになったら、って、一応、ン」
段々と小さくなる声は最後、キスで食べるように塞いだ。
「ン、ん」
なんだろう。
少し、レースがある感じ。Tバック、じゃなくて? 尾てい骨のとこにも、なんだろう、何かがあるのが手触りでわかる。
んー、けど、この前のじゃないよね。もっと立体的だったから。
「これ、ちょうちょ?」
「! っ、ううん、違う」
照れ臭くて、ぽつりぽつりと呟いてるだけなんだろうけど、俺の耳元で小さく囁くようにおしゃべりをされると、勝手に身体が熱くなってく。
「バラのレース、があって、綺麗、だったから」
そう囁いて、ぎゅっと俺にしがみついてくれた。そして、ちょっとだけ腰を突き出して、お尻に置いた手に押し付けるみたいにするから。
「ひゃっ、ぅ……ン……ン」
ルームパンツを引き下げて、直に触れると、尾てい骨のところに確かにレース編になってそうな何かが触れた。見えない分、指の触り心地だけで確かめてるとくすぐったいのか、桜介さんが腰を揺らしてる。触ってて、おねだりしてるようにしか見えなくて、ちょっと意地悪をした。触れるのは尾てい骨のところだけ。
もどかしい? もっとって言いたそうにしてる
その唇を甘噛みして、欲しそうに糖度の増した声を食べるように舌を絡ませて、唾液が唇の重なったところから溢れ流みたいに濃厚なキスをする。
でも、手は尾てい骨のところ。
「も、翠伊くんっ」
「うん」
「っ、っ、翠伊くんってば、あ、ひゃうっぅ……ン」
ぎゅっと抱き締めてくれる腕の中で、桜介さんの着ている服を捲り上げて、敏感な胸にキスをした。
「あ、あ、あン」
素直に溢してくれる甘い声を聞きながら、それでも手はまだ尾てい骨を撫でてる。
「も、翠伊くん」
「うん」
じっと見上げると真っ赤になりながら困った顔をしてた。ぎゅっと結んでへの字にしたいんだろう唇は、俺の指に合わせて、ふわりふわりって甘い声を溢してくれる。
甘い言葉と一緒に、言って欲しくて、意地悪をしてる。
貴方に。
「翠伊くんってば、あ……ン」
明日、じゃなくて。
早起きなんだから、なんて良い子な言葉じゃなくて。寝なさい、じゃなくて。
「も、と、触って」
悪い言葉を言って欲しくて。
「もっと?」
「ン、もぉ……」
ねぇ、早く。
「お尻、触って」
そうそう、その調子。
「あ、ぁっ、指っ、あっ……あっ」
指だけでいい?
「やぁ……っ、ン」
クチュって、やらしい音がした。そして、その音に、貴方が瞳を潤ませて、俺の肩にしがみつく指先にもっと強く力を込める。
「あ、指、気持ち、い」
二本に増やした指で、熱くて、きゅっと締め付けてくる内側を撫でていくけど。でも、これでいい? もう、これで満足? もっとずっと、悪くて、いけなくて、甘い言葉を口にして欲しいんだ。
ねぇ、桜介さん。
「あ、も……っ、翠伊くんっ」
あと一歩、ってところで、桜介さんが俺の膝から下りた。腕からもすり抜けて逃げちゃった。けど――。
「バラ……綺麗、な刺繍だから」
くるりと後ろ向きになった貴方が耳まで真っ赤にしながら、そっと、ベッドに乗っかった。そして、自分からその刺繍がよく見えるようにって、手をついて、四つん這いに。
「翠伊くん、も、恥ずかしくて、溶けちゃいそうだから、早く」
「っ」
夜更かしに誘う悪い言葉より、もっと破壊力すごかった。
「翠伊くん」
ただ、俺の名前を呼んでくれただけなのにさ。
四つん這いになって振り向きながら名前を呼ぶなんて。ダークブルーの微細なレースTバック。割れ目に食い込むその繊細なレースを指に引っ掛けて、ずらすと、熱で痛いくらいに張り詰めたそれで貴方に触れた。
もう、意地悪をしてる場合なんかじゃなかった。
「ぁっ……ン」
溶けちゃう、じゃなくて、溶かされちゃう、でしょ。
「あ、っ、入って、き……ちゃうっ」
入ってきちゃう、じゃなくて、貴方の中がしゃぶりついて離さないんだよ。
「っ、桜介さん」
「あ、あ、あ気持ち、ぃ」
そう呟いて、背中をしならせた貴方の細い腰を掴んで、奥へとゆっくり突き進んだ。
「ひゃぁ……ン」
抉じ開けられて震えるくらい感じてる貴方が腰を揺らすと、教えてくれた小さな黄色のバラが尾てい骨のところに三輪咲いていた。
「あ、やっ……触ったらイッちゃう」
そう呟く貴方の細くて華奢な腰をしっかり掴んで、背中から覆い被さった。
「桜介さん」
「あ、ダメ、名前、呼んじゃ」
「中、あんま締め付けないで」
「や、そんな、無理」
「気持ち良すぎて、やみつきになるから」
「あ、あ、翠伊くんっ」
ね、意地悪なの、桜介さんじゃん?
「翠伊、くんっ」
締め付けないでっていったのに、ぎゅって、キュってさせて、中が俺のこと、じゃあ、離してあげないっていってるみたい。夜更かしも、明日の起きる時間も気にしちゃダメっていってるみたいに絡み付いてくれるから、俺も答えるようにこの人に深くて痺れるくらいに甘いキスをして、奥までいっぱいに熱を突き立てた。
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