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機嫌を悪くしたらしい大河くんが、おもちゃを広げていた場所へ向かったのを、小口さんに断りを入れた後追いかけた。
床に散らかっているように置かれたおもちゃを見た時、「あっ」と思わず声を上げた。
そのおもちゃは知ってる。
「ぼくもそのハニワ好きだよ!」
幼稚園の間でも観てない子はいないというほどの教育番組内で放送されている人気アニメだった。
大河くんもそれを観ていただなんて!
これは仲良くできるチャンスだと思ったぼくは興奮が冷めやらない。
ところが、両手を拳にして何を話そうかと思っているぼくとは裏腹に、大河くんは無視していた。
仕方ないことだ。さっきの出来事でぼくのことを悪く思っていて、もはや敵視しているかもしれない。
それでも、仲良くなれるかもしれないと一縷の望みをかけたぼくは根気強く『ハニワのだいこうしん!』の話をした。
「さすがに酷すぎません?」
ぼく達の後を追いかけてきたらしい小口さんがそんな言葉を口にする。
確かに傍から見ればそんな風に見えるかもしれない。今だっておもちゃに目を向けていて、こちらの話を一切聞こえてないかのように振舞っているのだから。
でも、耳だけ向けているようだった。
まるで猫みたい。ちょっと可愛く思えてきた。
それにだって、見渡す限りこんなにもハニワのグッズがあるのだ。大好きに違いない。
だからぼくは、構わずに話を続けた。
話はできなくても、聞こえる耳はいくらだって聞けるだろうから。
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