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母と共に大河くんの住む家に遊びに来た。 初めて来た時と同じように安野さんに案内されて入った部屋で、あの時のようにソファには寝そべっている小口さんが気だるげな挨拶をし、その隣でテレビを観ている大河くんの後ろ姿があった。 確かこの時間帯にやっているのは再放送だ。 もちろんこの時間帯のも録画してある。 けれどぼくは、再放送を観るよりも大河くんと仲良くなりたい気持ちが強くて、母を急かす形でここへ訪れた。 元々行く予定があったようだった。 いくらぼくが行きたいと言っても、事前に言わず突然相手側の家に来てはとても失礼なことだ。 あの時帰り際に相手側がああ言ってくれたから、母が相手側と連絡を取り合ってこうして会わせてくれた。 母に改めてお礼をしなくては。 「小口っ、きちんと挨拶をしなさい」 「まあまあ、固いことは言わずに」 「こら、小口っ」 「そんな騒いでますと、大河さまにぶん殴られますよ」 「⋯⋯殴られるかは置いておいて、一応今は静かにしておきます」 「ですけど! 後でお説教ですからね!」と目尻を吊り上げて怒っていた安野さんは、ぼくに顔を向けた。 思わず身構えてしまったが、振り向いた時は穏やかな笑みを見せてくれた。 「伶介様、ごゆっくりしてくださいね」 「はい」 それでは、と軽くお辞儀する安野さんにぼくもまた軽く頭を下げ、去る安野さんと椅子に座る母が大河くんの母と話しているのを傍らで見ていると、 「まぁ伶介さまもそこに突っ立ってないで、一緒に観たらどうです?」 「たいがくんがよければ⋯⋯」 「伶介さまも同じものが好きなんでしょ? 遠慮せずに観ればいいんじゃないんですか?」 大河くんはそれでいいんだろうかと思いつつ、小口さんがそういうならと、二人がいる方へ行った。 ぼくがいた場所からだと、大河くんの隣に座る形になる。 本当はせめて小口さんがいる方にしたかったが、半月形のソファに沿うようにほぼ無意識に右側へと行ってしまった。 今さら引き返せないし、それに真剣になって観ている大河くんの前を横切ることは彼にとって不愉快極まりないだろう。 だから、素直に大河くんの隣に座った。

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