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またびっくりさせるような行動に、目を丸くし、口を開いてしまった。 いきなりどうしたのだろう。 「え、たいがく──」 そこで、口を噤むこととなった。 大河くんが口を開いたからだ。 何かを話したそうにしている。でも、両親は大河くんは話すのが難しいと言っていた。 難しいって、やっぱり恥ずかしくて話したくても話せないってこと? 疑問に思ったぼくの目には、大河くんが小さく開いたまま動かずにいた。 どうしたのだろうと思ったのも束の間、諦めたかのように口を閉じ、おもちゃが置かれている場所へと走り去ってしまった。 「あ、たいがくん」 「話せないことが悔しくて、また拗ねちゃいましたね〜」 片手を頭に抱え、涅槃のような格好をした小口さんに「そうなんですか?」と聞き返した。 「ええ。何が原因なのかはわたしも詳しく知りませんが、とても嫌なことがあって、話したくても話せないんですよ。それでも声を出そうとは思っているようですが、ご覧の通りで。だから、苛立ってああなるんです」 「そうなんですか⋯⋯」 どうして話せないのか、少し分かったような気がした。 大河くんが話すことを忘れてしまうぐらいのとても嫌なことって何なんだろう。 親や先生に怒られること? ぼくはある方向を向いた。 ぼくの母と向かい合わせに座る大河くんの母は、ぼくの母の話に控えめに笑って返している。 ぼくに大河くんと遊ぶことをお願いした時、そういうお願いをすることも迷惑ではないかととても申し訳なさそうにしていた。 全部が全部分かってないけれど、大河くんの母が大河くんの嫌だと思うこともしなさそうだ。 それにだって、床にお絵描き帳らしきものを広げた大河くんがちらちらと自分の母親のことを見ていたのだ。 それが言わずものの証拠だ。

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