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店内を見渡しつつ、チラリと彼の方を見る。彼は笑顔で拍手していた。彼にもしっかり喜んでもらえた。
ロイドは嬉しさをひしひしと感じながらステージから下りていった。
「ロイド、ありがとう!」
常連客がロイドに手を振ってくる。ありがとうございます、とロイドも手を振り返すが、立ち止まることはなく店の奥へと進んでいった。
バーカウンターのある場所は、基本的に賑わっている店の中では比較的静かなところである。ゆっくり落ち着いて飲みたい客にはうってつけの場所だ。
この場所にいる彼も、ロイドの歌が終わって、一人酒を楽しんでいた。
ロイドは一呼吸して心を落ち着かせる。
「あの……」
今日はきちんと話せるようにと意識して、背筋を伸ばしてロイドは彼に話しかけた。彼はすぐにロイドの方を向き、当たり前のように笑顔を見せた。
ロイドのことをただの歌手としか思って異なさそうだけれども、王子様が目の前にいると思ってしまい、ロイドはドキリと緊張に包まれた。
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