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「……どうしたの?」
彼に話しかけられてロイドは、はっとした。彼に言うべきことを伝えるために話しかけたのだ。見惚れているだけではしょうがない。
「この前は助けてくださりありがとうございました」
「この前……ああ。いいっていいって。その後は大丈夫?」
「はい。マスターに事情を話して、あの方は出禁になりました」
前々から対応を悩んでいたマスターであったが、ロイドに実害が出てしまったことにより、正当な理由で出禁をはっきりと言い渡せた。そしてマスターはロイドに今まで何もしてやれなかったことを詫びた。しかしロイドは、ようやく懸念がなく歌えることを感謝して、歌い続けさせてほしいと自らの意思を伝えた。
かつてないほどのびのびと楽しい時間を、店に来てくれた客に提供できたと思っているロイド。彼は来るのかなとそわそわして落ち着きがあまりなかったけれど、いつもより明るい一週間であった。
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