14 / 110
14
「それはよかった。まだまだ君の素敵な歌が聴けるんだね」
「はい、あなたのおかげです。そのお礼をさせてください」
「お礼? いいよ、大したことしてないから」
「大したことですよ! 僕が安心できるので」
「そっか。じゃあ、せっかくだからちょっと話そう。それがお礼で」
ねっ、と、彼はロイドに笑みを向けた。
優しい声も相まってか、ロイドは再びドキドキしていた。歌う前に緊張する以外では感じたことがない。ロイドの身体は突然どうしてしまったのだろう。不思議に思いながらも、ロイドはそっと隣に座った。
「この前君の歌を初めて聴いたんだ。そしたら元気が出てきてね。だから、また来ようと思ってたんだ」
「ありがとうございます。変なタイミングで出会ってしまったから、また来てくださるなんて……」
「ははっ。確かにそうかもね。でも俺は、迷惑な客よりも素敵な君に会いたい気持ちが強かったからね。結局一週間経っちゃったけど」
「と、とんでもないです……。僕は僕のとても大好きなことをさせてもらっているだけで、影響させるほどの力は持っていませんよ……」
まくし立てるように言ってしまったロイド。言い終わったと同時にはっとした。ロイドは興奮状態になると、うっかり機械翻訳じみた口調になってしまうくせがあった。まさに今、そうなってしまったと焦る。アンドロイドであることを見抜かれたかもしれない。
ともだちにシェアしよう!

