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「それはよかった。まだまだ君の素敵な歌が聴けるんだね」 「はい、あなたのおかげです。そのお礼をさせてください」 「お礼? いいよ、大したことしてないから」 「大したことですよ! 僕が安心できるので」 「そっか。じゃあ、せっかくだからちょっと話そう。それがお礼で」  ねっ、と、彼はロイドに笑みを向けた。  優しい声も相まってか、ロイドは再びドキドキしていた。歌う前に緊張する以外では感じたことがない。ロイドの身体は突然どうしてしまったのだろう。不思議に思いながらも、ロイドはそっと隣に座った。 「この前君の歌を初めて聴いたんだ。そしたら元気が出てきてね。だから、また来ようと思ってたんだ」 「ありがとうございます。変なタイミングで出会ってしまったから、また来てくださるなんて……」 「ははっ。確かにそうかもね。でも俺は、迷惑な客よりも素敵な君に会いたい気持ちが強かったからね。結局一週間経っちゃったけど」 「と、とんでもないです……。僕は僕のとても大好きなことをさせてもらっているだけで、影響させるほどの力は持っていませんよ……」  まくし立てるように言ってしまったロイド。言い終わったと同時にはっとした。ロイドは興奮状態になると、うっかり機械翻訳じみた口調になってしまうくせがあった。まさに今、そうなってしまったと焦る。アンドロイドであることを見抜かれたかもしれない。

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