31 / 110
31
「あー……それはないな」
怒った様子はないけれど、アンディの顔から笑みが消えた。何か気に障ることを言ったのではないかと不安になりつつも、ロイドは理由を知りたかった。
「それは、どうしてでしょうか……?」
「料理はあくまで趣味なんだ。楽しいだけで満足してる。だが、仕事にすると辛いことがどうしても出てきてしまう。それだけは絶対に嫌なんだ」
真剣な表情は、アンディの固い意志を示している。
ロイドは歌うという好きなことを仕事にしているが、言われてみれば面倒な客を相手にすることもある。辛いことが確かに発生していた。
「楽しいだけを感じたい、アンディさんの考えもいいかと思います。人それぞれですもんね」
「ああそうだな」
アンディにようやく笑顔が戻ってきた。ほっと安心したロイドは、再びアンディの手料理を食べ進めていった。
ともだちにシェアしよう!

