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「今日も素敵でしたよ、ロイドさん」
毎回そばで聴いてくれているサリーが、ロイドの隣にやって来た。笑顔は見せてくれないものの、お世辞を口にしないので喜んでもらえていると思っている。
「ありがとうございます、サリーさん。じゃあ、行きましょう」
ロイドはサリーと並んで歩き出した。
勢いで被験体になるとは言ったものの、一体何をするのだろうかと不安なところではあった。実際のところは、毎日昼の休憩時間に皆の前で歌い、数日に一度サリーかライルと会話をするだけだった。それ以外の時間は何もやることが決まりがない自由な時間であった。
サリーの研究室に到着すると、ロイドはサリーと向き合う形で座った。
「歌のレパートリーはどれくらいお持ちですか?」
「どれくらい……。両手では、数えられないですね」
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