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 モンブランを味わいながらそう語るアンディ。久々に味わうことが嬉しいのか、やけに饒舌だった。 「食の研究をしようとは思わなかったんですか?」 「前にも言ったが、あくまで趣味だ。仕事にすると辛いこともあるだろうし、それに今やってる研究は楽しくてやりがいがあるんだ。逃げ出すくらい辛いときもあるけどな」 「今日は逃がしませんよ」 「ちゃんと戻るぞ」  冗談を言いながら笑い合っていると、あっという間に食べ終えてしまった。ロイドは名残惜しさに包まれつつも、アンディの笑顔をずっと眺められて自身も笑顔になっていたことに、紅茶を飲みながら気付いた。  まだ一つしかやりたいことを達成できていないのに、楽しくてしょうがない。 「さて、そろそろ行くか」  アンディはそう言ってさっと伝票を持った。

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