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 この店のノンアルコールカクテルは、普通のカクテルにも劣らない味わいであると評判だ。見た目も、間違えてしまいそうなくらいそっくりになっているせいか、ロイドはアンディと同じものを味わっている感覚になった。  アンディは料理が来る前に一杯目を飲み切ってしまった。 「すみません、同じのお願いします」  料理が来てからも、アンディの飲むペースは衰えなかった。普段酒を飲んでいないアンディのスピードに、ロイドはだんだん心配になってきた。 「アンディさん、飲みすぎないでくださいよ」 「まだ、大丈夫だ……」 「歩いたらふらふらになる気がします」  料理を食べ終えたところで、アンディの飲むペースはようやく落ち着きを取り戻した。  ふと、ロイドはアンディの表情に違和感を抱いた。アルコールを摂取したから見える気だるさとは異なるもの、それがアンディの顔には浮かんでいる。ロイドはアンディから目が離せなかった。

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