72 / 110

72

「昔、子どものときの話だ。俺の家にはアンドロイドの家政婦がいたんだ。忙しい両親に代わっていつも俺と一緒にいてくれて、俺は彼女のことを本当の家族のように思ってた。だが、今日みたいに一緒に出かけて帰ってたときだった。居眠り運転の車から俺をかばって、彼女は死んでしまった。最期に俺の方を見ながら『許さない……』、そう言ったんだ。大好きだった存在を奪われた上に、負の感情を向けられた。だから俺は、アンドロイドと楽しく過ごすべきではないし、俺はアンドロイドに好かれるべきではないんだ。だから、避けるために今まで冷たくしてしまった。本当に申し訳ない」  アンディはロイドに深く頭を下げてきた。全身が震えていて、今でも過去の恐怖と戦っているように思える。 「アンディさん、頭を上げてください」  ロイドはそっと話しかけるが、アンディは動かなかった。

ともだちにシェアしよう!