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 あまりにも突然のことに驚き、ロイドは動けなかった。徐々に触れている手の温もりが熱いようにも感じられ、全身が痺れるような感覚に包まれる。  すると、アンディの指がロイドの唇に触れてきた。 「ひゃう!」  ビクリと肩が震えた。ロイドは現状座っているのが精一杯なのに、これ以上触れられ続けていては壊れてしまいそうだ。  離れてほしい。そう願うロイドに反して、アンディは顔を近付けてきた。鼻と鼻がぶつかりそうな距離で、アンディはじっとロイドを見つめている。 「アンディさん……」  もう限界だと伝えようと声をふりしぼり、アンディの名前を呼ぶ。 「アンディ、さん……」  もう一度呼びかける。唇に触れていた指が離れた。これでようやく離れてくれる。そう思ったときだった。

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