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ロイドがなんとか部屋に戻ってきたときには、陽が傾き始めていた。アンディは研究室にいなかったので先に帰っていたと思っていたが、まだ戻ってきていないようだった。
冷静になって考えろ、アンディに言われたことを改めて思い返す。けれども、今まで知らなかったことをきちんと正しいかどうか判断する方法は、ロイドには本を読む以外なかった。その本ですら否定されたものの、頼れるものは他にない。
「よし……」
ロイドはサリーに借りた本の続きを開いた。
『一瞬で離れてしまった彼。その顔はやけに苦しそうだった。
「好きってこんなに苦しいんだね……」
その言葉に私は頷くことしかできなかった。』
たった三行で、ロイドは本を閉じてしまった。まるで先ほどのアンディそのものを思わせる描写に、ロイドはアンディ以外のことを考えられなくなってしまった。
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