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 ロイドは部屋を飛び出して研究棟へ向かっていった。少し山奥ということもあり、外に出た途端暗闇がちょっと先に広がっていた。人がいないこともあり、不気味な印象がある。  ガタンッ──  研究所の入り口の方で何か物音がした。ロイドは恐怖を抱きつつも、その正体を確かめるために近付いてみる。有事には警報が鳴るはずなのに、と不審に思う。けれども、何かあったらすぐ近くにいるロイドが対応しなければ。  ようやく門がはっきりと見える距離まで近付いた。すると、そこに人が立っているのが見えた。こんな暗くなった時間に一体誰がいるのだろう。 「あの、どちら様で……」 「見つけたぞ、ロイド!」  ロイドの言葉を遮った粘着した声に、思い当たる人物がすぐに浮かんできた。かつてロイドが働いていたバーで、出禁になった男の姿が。

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