3 / 137
第3話 転校生はアルファ
「ハイ、注目!喜べ、新学期初日に転校生だぞ。先生の引きが強くて我がクラスに迎えることになった。では自己紹介を頼むな。」
少しテンション高めの池ちゃん先生の誘導で、黒板の前に立つ背の高い転校生は自分の名前をカツカツと音を響かせて黒板に書いた。
高井 新
そこにはバランスの取れた大きな文字でそう書いてあった。…高井?何処かで聞いた様な。俺がそんな事を考えながらぼんやり転校生を見つめていると、ふとこちらを見た気がした。直ぐに前を向いた転校生は、人好きのする笑顔で話し始めた。
「ハイ!ご紹介に預かりました高井 新です!東京の海王学園から転校して来ました。あ、別にあっちで何かやらかしたとかそう言う事じゃないから。まぁ、父親の仕事の都合で一緒に来た感じかな?
あんまり覚えてないけど元々地元で、昔はたまに来ていたみたいだからこっちでも直ぐに馴染めると思います。あ、色々教えて下さいね。よろしく!」
いかにも東京の高校生っぽい垢抜けた涼やかな外見とは裏腹に、人懐っこい物言いは直ぐに皆の警戒心を解いたみたいで、クラスメイトの顔に笑顔が浮かんでいる。
確かにこんなのんびりした地方都市に、東京の名門中高一貫校から転校して来たって言うパワーワードは俺たちを怯ませる。俺はあからさまにホッとしたクラスメイトの解りやすさにクスッと笑った。
また転校生が俺を見た?それでも先生の誘導で後ろの方の席に着いた転校生の事は、授業が始まると直ぐに俺の意識から消えた。お昼のチャイムが鳴ると、途端にガヤガヤと転校生の所へ人だかりが出来ていた。
廊下が賑やかな声と入り乱れる足音が響き出すと、教室の前のドアから叶斗が顔を出して俺を見た。
「やっぱり。絶対この席だと思ったんだ。相川は揺るぎない一番席だな。ハハ。がーく、今日弁当?買い弁?一緒に買いに行こうぜ。」
俺たちのやり取りをクラスメイトが見るともなしに注目しているのはいつもの事だったけれど、今日は更に変だった。叶斗がじっと転校生の方を見つめていた。転校生も叶斗と目を合わせている。
叶斗はそれから急に俺の腕を掴んで、引っ張る様にして教室から連れ出した。
「おい、引っ張るなって。一緒に売店行くんだろ?何?腹減った?」
叶斗は急に立ち止まると俺の方を向いておもむろに尋ねた。
「転校生?あいつアルファだけど、岳気づいた?」
俺はキョトンとして叶斗の整った芸能人の様な顔を見上げて首を傾げた。
「あー、そう言われてみるとアルファかもね?東京から来たらしいよ?何、アルファ同士だと直ぐに判っちゃう感じ?」
俺の言葉に叶斗は何か考え込んだ様子だったけど、何やら言葉を濁してまた歩き出した。
本当、こいつが何考えてるのか最近特に分かんない。俺につきまとう理由もだけど。俺は周囲の生徒の視線が叶斗とオマケの俺に集まるのを感じて、またため息をついた。
ともだちにシェアしよう!

