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第14話 衝撃

 おいおい嘘だろ?俺はベッドで仰向けになりながら板張りの天井を睨みつけた。気分の悪さなど何処か置いて来てしまった。さっき父さんが言ってた話があまりにも衝撃的すぎて、受け止めきれない。  俺がΩかもしれないって、なんだそれ。俺のそんな気持ちが顔に出ていたのか、父さんは一枚の写真を俺に見せた。それは赤ん坊を抱えた若い綺麗な女性の写真だった。 「これはお前の母さんだ。お前には話してなかったが、彼女はお前を産んだ後Ωに変異して、アルファと番になった。私たちは学生結婚だったから当時母さんは21歳のベータだった。  大学を休学して出産した後、友人を介して現れたアルファに、彼女は身体の中に持っていたΩを芽生えさせられたんだ。医者にもほとんど例がないって言われたよ。彼女は親族と縁が薄かったから家系を辿って調べることも難しかった。」  俺が母親の話を聞いたのは初めてだった。子供の頃に母親について尋ねても皆困った様に口をつぐむばかりで、祖父に至っては二度とその話をするなと叱られる始末だったんだ。  幼な心に俺は触れてはいけない話なのだと理解して、それは同時に年々俺と父親の間の距離を広げる理由になった。目の前の父親は俺を気遣う眼差しで話を続けた。 「彼女がβからΩに変異して動揺する私たちは、それでも問題はないと思っていたんだ。だけど、彼女とそのアルファの男を引き離すことは出来なかった。あれはβである私には解らない感覚なんだろう。彼女は私たちとその男との間に挟まれて、自死を望むほどひどく苦しんでいた。  私はそんな彼女を見てられなかった。だからお前を置いていく事を条件に彼女を解放したんだ。流石にお前まで失うことは私には無理だったからね。成長するにつれこの事はいつか話さないといけないと思っていたが、こんなタイミングになってしまって申し訳ないと思う。  お前は高校に入った頃から、成長が緩慢になったし、正直私とは違う様子で成長をしている気がした。お前は自分の写真を見比べた事があるか?別人とは言わないが、それに近い変化をしているよ。だから母親と同様、今日のような事が起きるのかと不安を感じていたのは確かだ。」  俺が呆然としていると、父親は席を立って言った。 「今日の血液検査の結果が明日出る。それ次第で検査入院という形で大学病院へいくかもしれない。…とりあえず、友人のアルファには会わないようにしてくれ。」

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