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第20話 学校生活ってこんな緊張感ある?
幸いな事に俺の気掛かりは一瞬で、俺たちは問題なくランチを楽しんだ。さすがのアルファなのか、叶斗は社交性を発揮する事にしたみたいで高井に東京の事などを根掘り葉掘り聞いていた。
その時初めて知ったのだけど、叶斗も全寮制の東京の高校への進学を親に勧められていたらしい。叶斗は面倒で近いからって北山高校にしたみたいだけど。俺は呆れて言った。
「面倒だからって入れる高校でもないんだけどね。一応ここ偏差値64あるし。そこそこ進学校よ?お前はチャラついてるのに成績良いから、マジむかつくよ。」
俺がそう言って不貞腐れると、叶斗は俺を覗き込んで言った。
「じゃあ、俺が真剣に取り組んだら何かご褒美くれる?俺、人参が欲しいタイプなんだけど。」
俺は目を細めて叶斗を睨んだ。
「何で俺がお前にご褒美あげなきゃいけない訳。一般人の俺の方が結果出すの大変なんだからな?」
すると話を聞いていた高井が話に割り込んできた。
「じゃあ俺が岳にご褒美あげようか。岳成績良さそうだけど、今上位どれくらい?」
俺はいつの間にか自分へのご褒美の話になってる流れについていけなくなって、ぼんやりとして答えた。
「…あ、えーと前回は17位だったけど。」
すると高井は眉を上げて爽やかに笑った。本当こいつ爽やかな病気にでも罹ってるんじゃないだろうか。うざ。
「へー、結構やるな。じゃあ今度の中間で17位以上だったら俺がご褒美やるよ。楽しみにしててよ。」
俺は入院してたし、正直今回はダメだと思っているけど、別にくれるものを拒む必要もないかと曖昧に頷いた。すると叶斗も俺に食い下がって来た。
「俺も岳にご褒美あげたい!入院してたし、大変だっただろ?休んでた間の勉強教えてやるから。俺文系だけど、理系が出来ないわけじゃないから。」
俺はクスクス笑って叶斗を見上げた。
「お前の辞書には、謙虚って言葉は無いのかよ。何気にパワーワード繰り出すし。出来ない訳じゃないって。ウケる。」
すると叶斗は俺をじっと見つめていたかと思ったら、急に俺のコルセットに指を掛けた。マジックテープの境目をバリバリと弄りながら俺に尋ねた。
「なぁ、これって何でつけてんの?」
叶斗の言葉に俺は一気に緊張した。首元でバリバリとマジックテープが外れる音がする。俺は手で叶斗の指を抑えると慌てて言った。
「…必要だからに決まってるだろ?医者の指示だから。」
そう言ってるのに、叶斗はコルセットから指を外さずに俺をじっと見つめて言った。
「いつまで付けてろって?」
俺は叶斗の強い視線に面食らいながら呟いた。
「…さぁ。先生が良いって言うまで?」
ああ、マジでこんなビクビクした生活が続くのか。俺やっぱり、こいつらと連むのやめたい…。
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