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第26話 罪は償います
『この責任をとってもらえれば、キスはちゃらにしてあげるよ』そんな高井の言葉が俺の脳内にこだました。痴漢したのは俺だけど、責任取るってどうやって?
俺は眉を顰めて高井の股間を盗み見た。うん、無理でしょ。ていうかこれは誰かにどうにかしてもらうとか、そう言うたぐいの事なんだろうか。俺の経験値ではどうして良いのか全然浮かばない。
「俺に何か出来るとか無いと思うんだけど。…俺もどうして眠っている時にそんな事しちゃったのか自分でも分からないんだ。えっと、今度改めてお詫びをするって事で、俺がお暇した方がその、大きくなったそれも鎮まるんじゃないかと思うんだけど。」
俺がそう言うと、高井はポカンとした顔で俺を見つめてからクスクス笑い始めた。そしてニンマリと全然爽やかの欠片もない笑顔で言った。
「そっか。そっか。そう言う事か。岳は全然そっちの経験が無いって事?」
俺は経験が有るのが普通だとでも言う高井を睨んで言った。
「…こんな地方都市でβの男子高校生が、そんなに経験豊富だったら逆におかしいだろ。都会育ちのアルファ様と比べられてもね。」
すると高井は形の良い大きめの一重の目で俺をじっと見つめて言った。
「…そうだな。あんまり強引にして俺も岳に嫌われたくないし。なぁ、さっき岳から俺にキスしたのは覚えているんだろう?…あ、気持ち良すぎて勃っちゃったんだっけ。」
俺は思わず視線を逸らして口籠った。
「…寝ぼけていたから覚えてない。」
すると高井が俺をソファにグイと引っ張り込んで隣に座らせて言った。
「でも確かにお前から強請って来たんだ。寝ぼけていたにしてもな?俺も煽られて収まらないけど、もう一回お前からキスしてくれたら無かったことにしてやるよ。うぶな岳だから特別だ。本当はもっと良い事してもらいたいくらいだけど。」
俺はこれ以上高井にキャパオーバーな事を要求されても無理だと判断して、一度はしてしまったみたいだし、一度も二度も変わらないと覚悟を決めた。
「…分かった。俺のファーストキスが寝ぼけてしたのも解せないし、自分が痴漢行為したってのもガッカリだけど、自分のせいだからここは腹を括る。お前にキスするよ。…でも俺のキスが、その、お詫びになるのかな。何か変な話だよな。」
俺がそう言って考え始めると、高井が慌てた様に俺に言った。
「さぁ、どうぞ。…いつでもいいよ。」
そう言って両手を広げたんだ。俺は顔が熱くなるのを感じながら、思い切って爽やかな微笑みを浮かべる高井ににじり寄って目をぎゅっと瞑って唇を押し付けた。
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