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★オメガ降臨★ 第28話 ネックガード
俺は高井の家から逃げ帰ってから、じっくり考えた。俺の身体はオメガになってしまった。その事実からは逃れられない。だったら、俺はこれを秘密にして生きていくのはきっと無理だ。
何処かでボロが出るし、この前叶斗がコルセットのマジックテープをいたずらした時の様に、緊張しながら生活するのも限界が来る。
俺は高原ドクターに電話した。
「夜分遅くにすみません。あのご相談があるんですが…。俺、ネックガードしようと思うんです。実は今日たまたまアルファと一緒に遊んでて、身の危険を感じたというか、自分の本能に負けそうになったというか…。
だから、自己防衛するのがお互いのためになると思って。…ええ。あ、そうですか!分かりました。ありがとうございました。…はい。おやすみなさい。」
俺は決意が鈍らないうちにリビングへと向かった。ウイスキーを飲みながら本を読んでいた父さんが顔を上げて俺を見た。
「…父さん、高原先生から預かっただろ?あれ使うから渡してくれる?」
父さんは暫く俺の顔を見ていたけれど、立ち上がって引き出しからビニール袋に入ったそれを俺に渡した。
「付け方は説明書がついてる。それは桂木先生が必要になるからとお前に用意してくれたようだ。東京で流行ってるデザインだそうだ。…私もそれを付けた方が良いと思っていたから、お前がその気になってくれて良かったよ。
もうひとつくらい予備を買っても良いかもしれないな。今度高原に入手方法を聞いておくよ。」
そう言うと、もう一度ソファに座って本を読み始めた。俺はそんな風にあっさりと対応してくれた事に感謝して、礼を言うと部屋に戻った。
袋から取り出すと、それは黒い特殊な生地で出来ていた。ジッパーの先に小さなチップの様なものが付いていて、外す時にスマホの読み取り機能で暗証番号と連動させるタイプだった。
だから暗証番号が分からないと簡単に外せない様に出来ているらしい。この特殊な生地は病院やレスキューにある特殊なカッターでしか切れないと説明書に書いてあった。
それだけオメガの首を噛まれる事は人生を変えてしまうということなんだろう。俺はネックガードが頑丈であればあるほど、オメガの立場の脆弱さを感じたんだ。
俺は鏡に映る自分の首に嵌まった少しツヤのある黒いネックガードを見つめながら、明日からの高校生活がどんな騒ぎになるのかと気が重くなっていた。
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