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第52話 体液注入

 「あー、高井狡い。しょうがないな、じゃあ後で俺も岳にマーキングしてあげるね。」  そう耳元で嬉しそうに囁く叶斗の声が甘い。俺は確かにマーキングされた方が良いらしいのは桂木先生から言い聞かされていたので、後で考えたらおかしな話だったのだけど、その時はそうされるのが当然だと思い込んでいた。  だから抵抗する事もなく、高井が俺に唇を押し付けるのを待ってしまっていた。  あまり表情豊かとは言えない高井が、今か今かと動揺しつつも待っている俺の顔を見るなり、急に吹き出して笑い始めた。俺と叶斗はこんな風に感情を見せる高井を見たのは初めてだったので、一緒にポカンとお腹を抱えて笑う高井を見つめた。 「ふふ、悪い。いや、岳ってほんとチョロ過ぎて…。ああ、可愛いったら。」  そう言うと、俺の肩を引き寄せて、今度こそ唇を合わせた。途端に甘いあの味が感じられて、俺は目を開けてられなくなった。  俺は自分の状況をもっと心配した方が良かったのかもしれない。でも、高井にキスされた途端、どうでも良くなってしまった。下唇を食まれて引っ張られて、強請る様なその動きに思わず口を開いてしまった。  そして、ゆっくり押し込まれる高井の尖らせた舌が俺の唇の内側の柔らかな部分をなぞり出すと、ゾクゾクとした感覚と、もっと欲しくなる甘い味に夢中になった。  その時、俺の背中に抱きついていた叶斗の手が、俺の胸をキュッと摘んだのを感じた。それは経験のないビリッとした気持ち良さで、思わずビクンと背中を仰け反らせた。  思わず出てしまった声は高井の口の中へと吸い込まれて、優しく、でも執拗に俺の身体を這い回る叶斗の手の動きに俺は身体を熱くさせられた。 「ああ、岳凄い良い匂いしてきた。やっぱりΩなんだな…。なぁ、もっとして欲しくなったんじゃない?」  そう胸を指先で悪戯されながら耳元で囁かれて、俺は高井が唇を離したせいもあって思わず甘く喘いだ。聞いたことのないその声は、俺を正気に戻した。  重い瞼を頑張って持ち上げると、高井が俺の胸元を後ろから撫で回す叶斗の手の動きをギラついた眼差しで見つめていた。 「叶斗、邪魔するなよ。くそっ、こんな顔されたらキスだけじゃ止まれない。」  こんな顔?俺がぼんやりした頭で高井を見上げると、不意に後ろに引き寄せられて、叶斗に耳やこめかみに優しくキスされた。その強請る様なキスに、俺は目を開けてられなくてゾクゾクさせられると、叶斗が身を乗り出して俺の唇を塞いだ。  ああ、ダメなのに。気持ち良さと、さっきとは違う甘い味に溺れて、俺は抵抗する事が出来ない。俺の口の中に容赦なく入り込んだ叶斗の舌に翻弄されている間に、気づけば俺は制服のシャツのボタンを外されていた。

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