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第53話 ダメだって!

 俺は叶斗の腰砕けになりそうなキスに溺れながら、胸元がはだけているのに気づいた。次の瞬間、痺れる様な刺激を感じて甘く呻いてしまった。  高井が俺の胸の先端にキス、いやもっと何か別のことをしたんだ。ああ、何だこれ。ビリっと何かが背中を走って、腹の奥へ響く感じ…。あ、ダメだって!俺は叶斗から顔を引き剥がした。  叶斗も高井も俺の急な動きに、ハッとして動きを止めた。俺は力が抜けていたけれど、ここで流されたらダメな気がして、身体を起こして、はだけた胸元のシャツを掴んで高井から防御した。 「岳…。」  高井の声に俺は首を振って言った。 「ダメだって!これはダメ。」  高井も何だか気まずそうにして立ち上がった。目の前に高井の股間が目に入って、少し兆してるのを見てしまった。俺はますます居た堪れなくて、立ち上がると慌てて二人から距離をとって窓際へ突きすすんだ。 「岳…、怖かった?」  心配そうな叶斗の声に、俺は首を振って答えた。 「そうじゃないけど!あのさ、俺Ωなんだよ…。」  高井と叶斗が俺の言葉に眉を顰めて顔を見合わせた。 「知ってるけど…。」  高井は訳が分からないと言う顔で俺を見つめた。あー、くそ。どーして全部言わないと分かんないんだよ。俺はもうやけになっていたに違いない。二人のキスという名の体液交換でマーキングは完了したし、もうこの場から逃げ出してしまいたかった。 「だからさ!これ以上興奮したら、俺濡れちゃうから!それは無理なの!俺的に!」  自分でもこんな事まで言う必要が有っただろうかと疑問に思ったけれど、俺にも余裕は無かった。下着を濡らして、万が一にもズボンを汚したら、もう社会的に死ぬ。それだけは避けたかった。  そんな俺の思いとは別に、何故だか目の前のアルファたちはみるみる顔を赤らめてため息をついていた。 「はぁ、変異Ωって凄い攻撃力なんだけど。そう思わない?高井。俺、こんな煽る様な誘い受けたの初めて。」  そう叶斗が言うと、高井も俺をぎらつく眼差しで見つめて言った。 「ああ、そうだな。もう、強制発情させたくなる。」  何だか二人が俺にとって物騒な事を言い出したのを感じて、俺はもう声を大にして言うしか無かった。 「俺に変なことしたら、嫌いになるからなっ!無理矢理絶対反対!」  すると叶斗は肩をすくめて笑って言った。 「分かってるって。俺は岳に嫌われる様なことはしないから。だから岳も俺たちを煽る様なこと叫ばないでよ。これでもかなり自制してるんだからさ。でもさ、キス以上ダメって酷くない?」  俺はやっぱりアルファと密室に入ってはいけないみたいだ。何と言ってもどんどん自分が制御出来なくなりそうな気がするから…。ああ、もう、ホント無理。俺何でΩになっちゃったの!?

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