60 / 137
第60話 放課後俺たちの行くところ
「で?誰の家に行く?」
俺は捕まった宇宙人の様に背の高いα二人に脇を固められて正門に向かって歩いていた。流石に最近は見慣れてきたのか、周囲の生徒たちも見て見ぬふりをしてくれている…はず。これじゃ、相川の予言した通りハーレムを築いていると思われてもしょうがない。
「…俺んち。今日父さん出張で帰ってこないし、長谷川さんはお孫さんの所へ行くって言ってたから、今日は来ない。」
俺の返事に、叶斗は高井に俺の頭越しに話しかけた。
「なぁ、お前アレ持ってる?俺抑制剤は持ってるけど、アレは2個しか無いんだよな。きっと岳は持ってないだろうし。」
高井はしばらく考え込みながら、ボソッと言った。
「俺も2つだな。家に帰れば一箱あるけど。じゃあ、先にバス停降りて取ってから岳の家に行く。」
俺は頭上で不穏な会話が交わされているのに気づかないふりをしていた。アレってやっぱりあれだよなぁ。どうせ俺は持ち歩いてないし、そもそも、持っていたとしてもこいつらとはサイズが違うんじゃない!?くそが。
「あれ?岳が凄く機嫌悪いなぁ。どーした岳。怖くなっちゃったか?でも今更キャンセルとかやめようね?俺、もう後戻りできないからさ。」
そう言って俺を覗き込む叶斗は、うっそりと色気を撒き散らしていた。俺はドキンとしてしまったけれど、高井の声に我に返った。
「おい、こんな所で岳刺激したらヤバいって。俺たちも煽られるから。」
「…本当、叶斗は考えなし。それに俺だってアレくらい持ってるし。」
そうカミングアウトした俺に何故か高井が食いついてきた。
「…へえ。岳は誰とそれを使おうとした訳?」
俺は丁度到着したバスに慌てて乗り込んだ。うっかりやぶ蛇になる所だった。目つきの悪い2人のガタイの良いαがバスに乗り込むと、乗客が注目するのがいやがおうにも分かった。
俺は一番奥の座席に座って、隣に2人が座るのを待って言った。
「とにかく、細かい事は良いから。もう俺何も言わないからな。」
そう言って俺は腕を組んで目を閉じた。…心頭滅却成せばなる。さっきの叶斗が何かしたに違いない。自分の身体の奥からじわじわと焦燥感が湧いてきていた。不味い。これは不味い感覚だ。
隣に座った2人が身じろぎしたのが分かった。
「まじか。勘弁してよ、岳…。」
そう叶斗が甘い声で言ったけど、俺にもどうしようもないんだってば!心頭滅却!
ともだちにシェアしよう!

