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第72話 蛇ってその蛇?

 昼休みに、いつもの様に空き教室で買い弁を食べていると、叶斗が放課後買い物に行こうと誘って来た。俺は朝の出来事を思い出して、行くところがあるからと断った。  叶斗はもちろんそれでは許してくれるはずもなく、結局朝の出来事について説明する羽目になった。すると黙って聞いていた新がボソリと言った。 「それって、多分俺の蛇。」  思いがけない言葉に、俺と叶斗が顔を見合わせて笑った。突然新が厨二病の様な事を言い出したから、ツボに入ってしまったんだ。俺たちがゲラゲラ笑っていたのに、新は笑いもせずに、気まずそうにしている。 「…マジで?」  俺はどういう事なのか新に尋ねた。新はため息をついて俺を見つめて言った。 「この前岳に渡したお守りあるだろう?あれの中身は蛇の式神なんだ。高井の家は陰陽道なのは知ってるか?もちろん伯父さんがメインで護符やら、祈祷、場合によっては呪いまで請け負っている。  ただ、俺には結構その手の才能があるみたいで、基本やらなくても良いと言われていたんだけど、最近は手が足りなくて式神を作るのだけ頼まれていたんだ。  式神は強い守りにもなるから、岳に渡したお守りに入れたんだけど。そっか、岳の従兄弟には見えちゃったか。山伏って凄いな。」  僕は新の言う事が半分も呑み込めなかった。新が陰陽道の助っ人をしていた事も驚きだったし、式神とか、聞いたことはあったけれど、まさか有効なものだとは全然認識してなかったからだ。  それは叶斗も同じだった様で、口をポカンと開けている。気を取り直したのは叶斗の方が早かった。 「確かにこの街に陰陽道の有名な人が居るって父さんが言ってたのは聞いた事がある。うちも多分風水とか、仕事の時期とか見てもらってるかも。そっか、そうだよな、新って高井かぁ!」  俺はまだいまいち掴みかねて、首を傾げて尋ねた。 「それで?俺に蛇が巻き付いてるって言われたんだけど。それは大丈夫なの?」  新はにっこり笑って言った。 「ああ、守りはばっちりだ。俺が念を込めて作った式神だからな、効果抜群だ。」  新はそう言うけど、でも、俺は何か嫌なんだけど!蛇に取り憑かれてるんだろう?俺が何も言えなくて呆然としていると、新はニヤっと笑って言った。 「大丈夫なのに。じゃあ、式神作るところ特別に見せてやるよ。特別だぞ?」  俺は伯父さん家に行く前に、新の家に行く事になってしまったみたいだ。

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