73 / 137
第73話 新の特技
「それにしても、お前引っ越して来たばかりだろう?いきなり陰陽道の手伝いなんて出来るものなの?」
中々鋭いところを突いてきた叶斗に賛同する俺は、隣でバスの振動に揺られている新に尋ねた。
「そう言えば、こっちに引っ越して来た理由って、お父さんの仕事の都合って事だったっけ。それって陰陽道に関係あるのか?」
新は少し声を落として言った。
「ここじゃちょっと言えないけど、まぁそんなとこ。…なんだ。お前たち興味深々だな?」
そう言って笑う新は、少し普段と違って緊張しているみたいだった。それだけあまり知られたくなかったのだろうか。バス停を降りると、急に新はペラペラと喋り出した。
「さっきの話だけど、高井家は陰陽道蛇目って、蛇の式神で有名な陰陽道の家なんだ。専門は風水や、商売の時期を見たり、式神で護りをつけたりするのが基本だけど、まぁ、たまに呪詛的な事も頼まれる。滅多にないけどね。
ここ数年で力のある祖父と長男の伯父が次々に亡くなって、次男の伯父が跡を継いだんだけど、仕事が多すぎで手に余ったんだ。元々祖父と長男の陰陽道の力が強かったから依頼は多かったしね。
俺の父親は三男なんだけど、次男の伯父さんから助っ人を求められたって訳。父さんは陰陽道が嫌で、若い頃に飛び出して好き勝手してた。それができたのは次男の伯父さんが間に入ってくれたせいらしくて、その恩を返す羽目になったらしいよ。
俺は離婚した母さんのいる東京に残ろうと思ってたんだけど、勝手に転校手続きさせられてて、俺の意思とは関係なくここに来た感じ?」
すると叶斗はニヤっと笑って言った。
「お前いつでも東京に戻って良いぜ。その方が俺には岳を独り占めできて良いからな。」
すると新は俺に笑いかけて言った。
「来て良かったよ。岳に会えたから。運命かもな?」
そう改めて言われると体がモゾモゾして来る。俺は咳払いすると、話が怪しい方向に逸れて来たことに焦って言った。
「それで?急にその、何かに必要な蛇の何たらを作れるのかって話だよ。」
すると新は真面目な顔をして俺を見た。
「お前が多分昔から山伏としての行動をし続けている様に、俺も中学生の頃には式神作りはさせられて来たんだ。父親の見様見真似でな。定期的にそれをこっちに送っていたから。それも、両親の離婚した理由のひとつかもしれない。
俺にとっては遊びの一つだったけど、血筋だったのか、案外上手かったみたいでさ、一種の小遣い稼ぎになってて。母親にはそれが気持ち悪かったんだろうな。あ、別に血生臭い訳じゃないぜ?」
新はそう言って最後はふざけたけど、俺には少し寂しげに見えた。
ともだちにシェアしよう!

