85 / 137
第85話 進路説明会
講堂で進路指導の先生や、OBの進路説明会を受けながら、俺たちは手元の資料を眺めていた。こうして見ると、地元の国立へ進学するのは15%程度で、首都圏へ60%、残りが全国へという感じだった。
俺は身体が変異する前は、従兄弟の桃李と同じ地元の国立大に行こうかと漠然と考えていた。けれどΩ対応必須となると首都圏への進学、それも私大へ進むのが妥当に思えた。
隣で資料を眺めている叶斗は、実家が会社経営だ。コネ作りも兼ねて、OBの繋がりの強い伝統有名大学かなと話していた事がある。前を向いている新は元々東京育ちで、拠点のマンションもあるので、東京に戻るのだろう。
先日のホテルの際、結局延長になった俺たちは、腰が逝ってしまった俺の為にしばらく本当の休憩もした。その時に山伏の俺には話し易かったのか、陰陽道の話も色々していた。
新はそっちのセンスが有るけれど、仕事として拘束されるのは父親までらしく、できれば手伝ってほしいという条件らしかった。
『まぁ、伯父さんの圧が凄いから、式神くらいなら今までの様に東京でも作れるからね。父さんもこれ以上は、俺まで巻き込むつもりはないみたいだし。俺としては、岳が東京へ出るなら一緒に暮らしたいから、もう伯父さんが何言おうがぶっちぎるけども。ハハ。』
何か当然のように一緒に暮らすとか言ってくれちゃって、俺はなんて答えていいか分からずに、曖昧に相槌を打った。俺がこいつらに取り込まれるのは決定項なのかな…。
そんな事を思い出してぼうっと新を見ていたせいか、ふと新が俺に視線を動かして囁いた。
「岳、俺に見惚れてるのか?」
俺は首をフリフリすると、叶斗の面倒臭い眼差しを苦笑いで受け止めて、資料に視線を戻した。あの後、叶斗にはラブホテルに行ったことがバレていて、満面の笑みの叶斗に、いつ二人で行こうかとせっつかれているんだ。
いや、叶斗も俺の腰をやっちまいそうだから、今はちょっとっと言ったもんだから、それから叶斗の機嫌が悪い。新の事も詰めてたから、よっぽど腹に据えかねたようだった。
叶斗は昔から俺に結構なストーカー気質だから、あんまり放っては置けないんだけど、あれをもう一回とか、本当腰がダメになりそうで…。しかし説明会聞きながら、俺が自分の腰を心配してるって、ほんと俺って爛れた人生送ってないか?
俺はそんな人生を狂わせた自分の身体の事は棚に上げて、原因の一つでもある二人のアルファを、じとっと恨めしく見てしまった。するとしれっと叶斗が、俺の耳元に唇を寄せて言った。
「岳くん?説明会はちゃんと聞こうね。そんな恨めしい顔してないで、集中して?」
ともだちにシェアしよう!

