102 / 137

第102話 東京で何する

 朝から腰が怠くて動けない…。俺は昨日の動画の一件で、かえって酷い目にあった気がしたけれど、実際は俺も馬鹿みたいに夢中になったのは間違いない。本当にΩって怖いバース性だ。自分でコントロール出来ない恐怖というか。  そんな事を考えながら、ベッドに近づいてくる新を見つめた。 「動けない?悪かったな、ちょっとタガが外れちゃって。」  俺はジト目で新を見つめて言った。 「本当それ。俺も人の事言えないけど、一対ニじゃ、こうなるのは分かりきってたろ?俺に思いやりくれよ。あ、あと腰揉んで欲しい。」  そう言ってため息をつくと、新は苦笑して俺の頬に唇を落とすと、ベッドに寝転んだ俺に跨って、俺の腰をゆっくり押し始めた。ああ、マジで効く…。俺が気持ち良さで呻いていると、叶斗が部屋に顔を覗かせた。 「ああ、起きた?腰ヤバい?岳があんまりにも可愛いから、ちょっと無理させたよね。今日のスケジュールなんだけど、早めにキャンパス巡り切り上げて、買い物と食事行こう。親父がこっち来た時に使ってる店が幾つかあるんだけど、ツケで食べて良いって言うからさ。タダ飯良いだろ?」  そう言って、ニカっと笑った。もちろん食べ盛りの俺たちはタダ飯には目がないけれど、叶斗がすっかり遊びにシフトを変えているのに気づいて尋ねた。 「お前は見学したい大学とかないの?」  俺がそう尋ねると、叶斗はにっこり笑って言った。 「俺はさ、岳と一緒の大学が行きたい大学かな?ていうか、別とかあり得ないだろ?岳はちょっと優位なアルファのフェロモンに流されちゃうから。しかも高校の間に発情期来れば良いけどね、もし来なかったら、それこそ放ったらかし無理だ。」  俺は首を傾げて呟いた。 「なぁ、Ωって番えるの一人だけじゃなかった?お前たち、そんなに俺に執着して、もし俺と番えなかったらどうするつもり?」  そう言うと、俺に跨って腰を揉んでいた新の手が止まった。目の前の叶斗も分かりやすく顔を引き攣らせた。 「岳って時々凄い残酷な事言うよね…。」  眉間に皺を寄せた叶斗は、何を考えているか分からない表情で俺を見つめて言った。俺は新から這いずり出ると、腰をさすりながらベッドから足を下ろして、ゆっくり立ち上がって言った。 「それにさ、俺は変異Ωで、完全なΩになる確率は100%じゃないんだ。このまま一生発情期来ない可能性もある。それは桂木先生も言っていたし、お前たちにも言ったよな?それってアルファ的に自分の子供も持てないし、そもそも番えないって事だけど、それで良いの?  俺は元々βの男だから、そうなっても当たり前だけどね。むしろ、子供や、番うのがレアな事だから。だからさ、お前たちもそこら辺の事、もっと良く考えろよ。…俺シャワー。あ、誰も来るなよ?」  俺は気になっていた事を吐き出すと、何か言いたげな二人を置いてシャワーを浴びに言った。まぁ、これはいつか言わなきゃいけない事だからな。そう思うのに、なぜか胸が痛かった。

ともだちにシェアしよう!