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★選択★ 第116話父さんの心配
駅に着くと、叶斗の家の車が待っていた。俺と新も一緒に乗り込んで家までそれぞれ送ってもらった。家の前に到着すると、先に降りた叶斗が俺をぎゅっと抱きしめて、にっこり笑って言った。
「じゃあ、明日学校で。はぁ。ずっと岳と一緒だったから、何だか寂しいな。何だろ。発情期後遺症?」
俺は馬鹿な事を言ってる叶斗を車に押し込むと、運転手をしてくれている叶斗の会社の人に頭を下げて、新にも挨拶すると車を見送った。丁度その時、玄関から父さんが顔を出した。
「おかえり。何だ、二人に挨拶したかったのに。今度うちに連れて来い。な?」
俺は肩をすくめると、キャスターバックを引き摺って久しぶりの家の中に入った。2泊3日の予定が、結局7泊8日になってしまったんだから。そう言えば、あの滞在中の費用はどうなったんだろう。
「父さん、俺の発情期、病院に併設されてる施設っぽかったけど、費用はどうなったのかな。」
すると父さんは呆れたように俺を見つめて言った。
「挨拶も無しか?手を洗って来い。茶でも淹れよう。」
俺は玄関にバックを置くと、素直に手を洗ってリビングへ入って行った。ドカリと三人掛けのソファに座ると急にどっと疲れが押し寄せてくるようだった。
父さんが淹れてくれたカフェオレを受け取って、俺は少し気恥ずかしい思いで1人用安楽椅子に座った父さんを見つめた。
「ただいま、父さん。ごめん。心配かけたよね。」
俺がそう口火を切ると、父さんはニヤっと笑って首を振った。
「いや、心配はしてない。何と言っても桂木先生の大学病院で管理されてたからな。これ以上の安心は無いだろ?まぁ、あのネットニュースがまさか岳の事だなんて思わなかったが…。結局あれもうやむやにされて、今はもうニュースサイトにも記事が出てこない。
それって、よっぽど岳の事が知られたら不味いって事なんじゃないかって、高原先生と話をしてたんだ。…桂木先生に聞いたか?番うなら早い方が良いって。私はβで、その、番の相性だとか、絶対的な番であるとかの感覚は理解出来ないけど、岳はどうなんだ?
あの二人はお前の番たる人間か?」
俺は温かいカフェオレを喉に流し込みながら、父さんの言う意味を考え込んでいた。そして俺の特殊なΩ事情も。
「ねぇ、父さん。俺もΩになったばかりで全然細かいことは分からないけど、アルファ一人だけじゃ無理なのは今回の事でよく判ったんだ。それって山伏に修行してたせいかも知れないって、冗談で話してたんだけどさ。
…高原先生に聞いただろ?俺ってマジレアものだって。ほんと、困っちゃうよな?」
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