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第118話 灰原さん登場

 「おはよう。岳くん。高井君。」  下駄箱で圧倒的なオーラを撒き散らしながら、灰原さんが僕たちを待っていた。新は俺の一歩前に出て庇う様にしながら、灰原さんに尋ねた。 「灰原さん、なぜあなたがここに居るんですか?」  俺でも分かる尖った声で、新が灰原さんに尋ねた。灰原さんは悪戯っぽい目をして新を見ると、後ろから覗き込んで居る俺にびっくりする様な甘い視線を送ってきた。  「高井君、おはようの挨拶もなしかい?僕がここに居るのは、まぁ、スクールアドバイザー的な立場かな。しばらく時々ここで顔を合わせると思うからよろしくね。岳くん、発情期の時は呼ばれなくて残念だったよ。いつでも対応できる様に待ってたんだよ。」  灰原さんにそう言われて、俺は自分でも顔が赤らんでるのが分かる気がした。まったくこの人、こんな所で何言ってくれちゃうんだよ。周囲を取り囲む生徒たちが、ヒソヒソ目を輝かせてゴシップがここで生まれている事を察知していた。  俺は慌てて新を押し退けて灰原さんに対峙すると、いかにも上位アルファらしい隙のない立ち姿を見せつけている灰原さんに言った。 「あまり目立つ事は困ります。灰原さんが目立つのは勝手ですけど、俺を巻き込まないで下さい。」  そう言って睨み付けると、灰原さんは少し困った顔をして申し訳なさそうな顔をして言った。 「いや、すまない。どうしても朝一番で岳くんの顔を見たかっただけなんだよ。君を困らせたかった訳じゃ無いんだ。…岳くんは会う度に雰囲気が変わるんだね。驚かされるよ。近いうちに話をしよう。  じゃあ、もう一人の番犬が来たから、退散するよ。またね、岳くん。」  そう爽やかな笑顔で言うと、職員室棟の方へと立ち去って行った。後ろから走ってきたのか、叶斗が息を切らしながら、俺たちに尋ねた。 「はっ、ねっ、何で!あいつがここに、居るのっ!」  そう言いながら俺の腰を何気に引き寄せるんじゃねぇ。俺は腰から叶斗の手を引き剥がそうと頑張ったが、全然無理だったので、思わずそんな叶斗を睨んだ。 「ふぅ、マジで焦ったんだけど。岳、おはよ。今朝は一段と綺麗だね。俺たちが沢山愛したせいかな。」  とんでもない燃料を朝からぶち込んでくる叶斗の口を手で覆うと、うっかり腕の中に取り込まれてしまった。相変わらず色っぽい顔を寄せてくる叶斗に、俺はもう学校来るのが嫌になってきたよ。ああ、周囲の視線が痛い!

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