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第119話 発情期ってそんなにレア?
あの相川でさえ、聞きたそうにする割に話しかけてこない。どうもΩの発情期は口にしちゃいけない事みたいだ。と言っても、公休を使ってるくらいだから、クラスメイトには完全にバレてる。しかも俺が二人のアルファと引きこもってやりまくった事がバレバレという、何とも居た堪れない状況だった。
これだったら、何も考えてない相川辺りにあっけらかんと毒舌を振り撒いてもらいたいくらいだ。俺は渋々、新が自分の席に向かった隙を見て周囲にも聞こえるように相川に話しかけた。
「マジで久しぶりだわ、学校。連休に東京に大学見学行って以来だからな。」
すると、相川が興奮で目を輝かせて俺に尋ねた。
「やっぱり!?ネットニュースは直ぐに消されちゃったけど、SNSでΩパニックって凄い噂になってたからさ。何気なく見てたらチラッと大沢が画像に写ってた気がして。
まさかと思ってたんだけど、そしたら東が発情期で休んでたろ?これ、東京行ってたらドンピシャじゃね?って話してたんだって!」
俺は顔を引き攣らせた。俺今、噂に確証を与えたのか?そんな動揺する俺におかまなく、相川は機嫌良く頷くと、それでも俺を見て首を傾げて言った。
「でもパニックになるくらい、発情期酷かったって事?東初めてだったんだろ?…何となくやつれた?いや、ちょっと違うか。何ていうか…。ま、いいや。まぁお疲れさん。でもΩの発情期ってそんな感じなんだな。俺、びっくりしたよ。」
俺もびっくりだよ。でも相川がそれ以上突っ込んでこなかった事にちょっと有り難く思って、周囲のクラスメイトの視線は感じるものの第一関門は突破した気がした。
昼休みはいつもの様に叶斗が俺を迎えに来て、俺たち三人は空き教室へと向かった。周囲の視線は今日はコソコソと噂付きな感じがしたけれど、流石に相川の言う事が本当だとするとそれも致したかが無いのかなと思って諦めた。
「凄い噂みたいだね。俺も教室で東京行ってたか聞かれちゃったよ。それは答えなかったけどさ、きっとバレるよね。」
そう一番に食べ終わった叶斗が言うと、新が呆れた様に俺を見て言った。
「ああ、さっき岳が自分から東京行ってたってゲロってたからな。もう、広まってるだろ。」
叶斗は目を見開いて俺を見た。
「マジで。岳って、本当そう言う、アホっぽい所あるよね。だから俺、放っておけないのかなぁ。」
俺は自分がやらかしたのは分かってたから、ぐぬぬと唇を噛み締めて叶斗を睨み返した。すると叶斗が妙に甘い表情で俺に言った。
「岳がそんな可愛い顔したら、俺止まんなくなるけど?」
そう言ってふざけて手をワキワキさせるから、俺は慌てて新に救いを求めた。新は俺たちを呆れた様に見ながら、叶斗に言った。
「それより灰原さんじゃないの?問題なのは。」
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