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第120話 結局は俺の問題
灰原さん問題と新が言うから、俺はまたしても悪い予感が押し寄せてきた。アルファ二人が顔を寄せて何やら話し合っているのは、俺にとっては悪い兆候だろ?
結局俺が番うとかって話に繋がってくるわけで。しかも前回のΩパニックの件もあるし、多分時間の猶予はそうないのかもしれない。俺は不貞腐れながら、最後のお茶を飲み干した。
マジでクサクサしてきた。目の前の逃れられない難問に、俺にだって決めきれない答えを出さなきゃいけないなんて。いっそあみだくじで決めようか。きっと以前の俺ならそうしてたかもしれない。
でも、Ωになったせいなのか、それとも発情期を経験したせいなのか、俺には目の前の二人が特別に見える。そう、灰原さんより。そうか、俺はあまりにも世界が狭すぎる。今流行りのマッチングはどうかな。比較しないと答えなんて出ないだろ?
俺がニンマリしてたせいなのか、急に叶斗が俺の方を向いてじっと睨んできた。
「何か岳がよからぬ事考えてる気がする。言いなさい、怒らないから。」
俺は明らかに挙動不審になってしまった。こんな時の叶斗は妙に鋭いから、誤魔化せる自信が無かった。俺は早々に負けを認めて肩をすくめた。
「絶対に怒るなよ?桂木先生には出来れば早く番えって言われただろ?俺はアルファへのΩのセンサーも鈍ければ、アルファもお前たちしか、実際にはよく知らない。
お前たちに不満はないよ。実際相当絆されてると思うし。でも番ってそんな感じで決めるの?俺のβ的思考では、逃れようもない相手ってイメージなんだよ。
だからさ、もうちょっとサンプルが欲しいって言うか、他のアルファとお前たちがどう違うのか比べたいなって思っただけ。ほら、怒るなよ。」
叶斗は腕を組んで、明らかにムカついていた。
「はぁ?まったく岳の鈍感さには恐れいるよ。あんなに蕩けて俺たちが特別じゃないとか、あり得ないでしょ、新も何か言ってくれって。」
すると新が叶斗の肩を掴んでなだめると、俺の方を向いて言った。
「…岳の言う事も分からなくない。ずっとΩだったのなら、その手の感受性はとっくに卒業してるもんだからな。でも岳は鈍い上に、変異したばかりだ。そう考えるのもしょうがないさ。
分かった。岳の好きにしても良いぜ。でも具体的に何をどうするかは教えてくれるだろ?」
そう言った新も、決して良い気持ちで許した訳じゃないみたいだ。まぁ、俺たちの関係は許すとか許さないとか、まだそんな関係じゃ…ないよな?俺は深呼吸すると思い切って言った。
「俺がサンプルとしてやってみたいのは二つ。灰原さんとデートと、マッチングアプリでアルファとお見合い。」
そう言った途端、肌が急にピリピリして、二人の空気が変わったのを感じた。俺はザワザワとドキドキを一緒に感じながら、目の前に二人が近寄ってくるのをゾクゾクしながら待つしかなかった。ああ、やっぱりこっそりやるんだった!
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