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第121話 怒れる二人のアルファ
目の前に迫ってきた二人は目配せすると、俺を前後に挟み込んだ。俺はドキドキしながら、二人の機嫌を取ることにした。
「なぁ、怒らないって言っただろ?俺、発情期来る前は、マジであみだくじで番決めても良いと思ってたんだ。でもさ、発情期終わったら、明らかにお前たちに愛着湧いちゃって。それがどれくらいのレベルなのか知りたいって思うのが人間だろう?なぁ、怒るなって。」
そう必死に二人を説得したら、目の前の叶斗が顔を歪めてため息をついて呟いた。
「正直言えば、岳の言っている事は分かるんだ。方法はともかく、比較したり、自分の気持ちを確認した方がいいって事だって良く分かってるんだ。
でも、俺の感情は腹ん中が暴れ狂うみたいになるよ。岳が他のアルファに付け込まれるかと思うと本当嫌だ。でも我慢するべきなんだろうな。俺、自分がこんなに嫉妬深いとか全然知らなかったよ。」
そう言って、俺をぎゅっと抱きしめると甘える様に俺の額にキスした。なんで唇じゃないのかなと無意識に思ったのは内緒だ。すると後ろに回った新が、やっぱり叶斗ごと俺をだきしめながら、首筋に額を押し当てた。
「俺もだ。マッチングアプリ?お見合い?マジで俺の知り合い参戦しそうなんだけど…。マジか。」
俺はどうも二人を苦しませてるみたいだ。心苦しいけれど、俺もここは引き下がる気は無かった。
「悪いけど、俺もデータが必要なんだよ。変異Ωなんてぶっ飛んだ事になって、混乱してるのは間違いないし。お前たちの事は、その、好きだよ?でも番ってその先にあるものなの?俺はその答えが知りたいんだ。だから悪いけど、サンプルは取らしてもらうから。」
俺を胸に抱き寄せていた叶斗がボソリと言った。
「俺、岳に捨てられそうで、泣きそう。慰めて。」
いやいや、別に捨てるなんて一言も言ってないし。ん?捨てるのか?場合によっては。俺が要らぬ事に気を飛ばしていると、後ろからも耳元で新が言った。
「俺も…、慰めて。俺の大事なΩが婚活に勤しむみたいで、何か辛い…。」
ん?何か色々言ってるけど、その慰めって俺の身体がも持たないやつじゃないの?俺は急に色気を出してくる二人に挟まれて、それこそ逃げ場を失っていた。
「あの…。もう直ぐ授業始まるんだけど。学生なんだから授業は出なきゃダメ、絶対!」
俺は必死だった。俺の裏切り?にこいつらのお仕置きがヤバいレベルで炸裂しそうだなんて、とりあえずここじゃダメ。うん。すると新が耳元で囁いた。
「じゃあ、放課後俺の家行くだろ?」
ああ、死刑宣告じゃないのかな、これって。俺の目は死んだ筈だ。叶斗の楽しげな顔と引き換えにな。
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