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第122話 回避したのか問題
俺が放課後について気が重くなっている暇も無く、授業が終わると廊下で待ち伏せていた灰原さんが話しかけてきた。
「岳くん、これから高原先生の所に話をしに行くんだけど、参加してくれないか?君のお父さんから、その件で連絡入ってると思うけど。桂木先生もそろそろ到着している頃だ。」
そう言われてしまえば、俺に断る選択など出来なかった。ピリピリする様な圧を感じたけれど、あの二人から堂々と逃れられる理由が出来て、ちょっとだけホッとしていた。
俺は憮然とした顔の二人から離れて、灰原さんの高そうな車に乗り込むと、息を吐き出した。すると灰原さんが眉を持ち上げてバックミラーに映る二人の姿を見ながら、俺に話し掛けてきた。
「何だかホッとしたみたいだね。あの二人の醸し出す怒りのオーラと関係があるのかな?」
俺は苦笑して、狭い二人だけの空間がそうさせたのか、思わず愚痴っていた。
「そうですね。ちょっとあの二人にとっては承諾できない事を俺がしようとしてるもんだから、俺に怒ってるんです。それをぶつけられる前に灰原さんが割り込んだから面白くないんでしょう。俺はどっちかというと、ホッとしましたけど。」
すると、灰原さんはクスッと笑って言った。
「じゃあ、私が割り込んだのは岳くんにとっては悪くなかったって事かな?良かったよ、助けになって。」
そう、楽しげに言う灰原さんの声を聞きながら、そうは言っても先送りにしただけの様な気がしていた。俺はもう一度ため息をつくと、灰原さんに向き直って尋ねた。
「それで、今日の話って何ですか?」
すると灰原さんは少し難しい顔をして話し出した。
「先日の発情期の結果と分析の報告と、今後の検討と言った所かな。」
そう言われて、俺もまた丁度良い機会だから、桂木先生に俺が考えたアルファのサンプル採集ついて言ってみようと思った。Ω事情がよく分かってる人に相談できるのは心強い。
…とりあえず灰原さんとデートしようと思った事は、言わない方がいいかもしれない。この人も紳士ヅラしてるけれど、以前俺に対して暴走した事は記憶に新しいのだから。
俺は車の中に篭る、灰原さんの甘い匂いに少し心臓を速くしながら、スイッチが入るまでに高原医院に着いてくれとジリジリしながら車の振動に身体をもたれさせた。灰原さんが、俺の様子を窺っているのには気がつかなかったけれど。
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