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第125話 お試し
蕩ける様な感覚に、俺はその先を堪能したくなった。灰原さんは絶対に無理強いしないと、どこかで確信めいていたせいで、俺は調子に乗った。
いつの間にか倒れ込んだシートに覆い被さっていたのは俺の方だった。ハンドルが邪魔にならないくらいフラットになった座席で、重なる身体を密着させていた。
意識のどこかでこれ以上はヤバいと感じていたのに、俺にリードを任せてくれるせいで止まれなかった。いや、止まらなかったんだ。
叶斗とも、新とも違うそのフェロモンは新鮮で、俺を貪らせた。口の中で優しく舐めすする灰原さんの舌使いは、どこか様子を見ている感じがして、本気を出させてみたいと思わせた。
甘やかす様にゆっくりと制服の上から身体を撫でていた手は、いつの間にか素肌を撫でていた。ふと、顔を上げて灰原さんの顔を見つめれば、どこか緊張した様に強張っていた。
そして自分があられもなく素肌を晒して、尖った胸の硬いてっぺんが近くの街灯に照らされているのを見た。すっかり昂った股間は、やっぱり灰原さんの硬いそれに重なっていて、さっきから焦らす様に動かされていた事を思い出した。
「やば…。こんな場所で盛っちゃうとか。灰原さん、止めてよ。」
俺がぼんやりしながらそう呟いたら、灰原さんはグッと俺のお尻を引きつけて股間を擦り合わせた。俺が目を閉じて呻くと、灰原さんは言った。
「このまま、ここで最後までする事も出来るけど、それは岳くんは嫌だろう。…それともそれが望みかい?」
俺はぼんやりする頭をはっきりさせるために、首を振って、同時に灰原さんのフェロモンを振り払うことが出来ればいいのにと息を吐き出した。
「やっぱり、俺は灰原さんのフェロモンに弱いですね。誰でもΩならそうなのかな。灰原さんはどう思いますか?」
すると灰原さんは俺の胸の先を甘やかに舐めて、じゅっと吸い付くとゆっくり俺を抱えたまま起き上がって言った。
「そうだね、確かに私のフェロモンはΩに強い。でもね、私が岳くんのフェロモンに弱いんだよ。岳くんのフェロモンでしか、私を酔わせない。」
俺はクスクス笑って言った。
「俺、灰原さんがずっと大人の対応してるもんだから、調子に乗ってたのは自覚あるんです。でも、灰原さんの本気も知りたくなったな。…今度の週末、一泊でサンプル回収しましょう。迎えに来てくれますか?」
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