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第132話 疲労困憊

 よく学校に来られたと、俺は机に突っ伏しながら思った。とは言え二限からしか来れなかったけれど、呆れた様な新の視線がうるさい。  相川は後ろを振り向いて言った。 「東、調子悪いなら保健室行ったらどうだ?」  俺はそうしたいとも思ったが、叶斗とやり過ぎで疲れ切ってるからと言って保健室で休むのもどうかと思ったし、下手にベッドのある静かな場所は怖い気がした。視線のうるさい新が教室に居るからな。  そうは言っても授業にならなくて、俺は遂に四限前に保健室へ旅立った。連れてきてくれた新が呆れた様に俺に言った。 「今日無理して来なければ良かったのに。叶斗サボってるぜ?」  俺は目を見開いて顔を顰めた。 「あいつマジか…。くそ、俺も休めば良かった。…ま、俺はアレだ。新の顔見るために来た様なもんだからさ。」  新は驚いた様に俺を見た。俺はニヤっと笑って保健室のベッドに横になって目を閉じて言った。  「そ。新が臍曲げない様に、気を遣ったって所。新だって週末のサンプルデートは気に入らないんだろ。でも、叶斗に先に癇癪おこされたら、引くのは新らしいっていうか。  だから新の顔ちゃんと見て、話もして…。俺はさ、新の事も凄い大事だからさ…。新のこと好き…から…。」  ベッドに吸い込まれる様に、俺の意識は遠ざかった。気がつけば保険医の先生に起こされて、新が呆れた様にガクバンを手に側に立っていた。 「お前寝過ぎ。昼メシ抜きでもう放課後だぞ。家帰って寝ろよ。…何か食べてくか?」  俺はムクリと起き上がると、保険医が職員室に行くわねと言う声に返事をしながら、照れた様な顔をしている新をじっと見つめた。 「なんか、お前変だな。どうかした?」  すると、新は怒った様に俺に言った。 「岳は無自覚に俺を振り回すんだよ。どうせ覚えてないと思うけどな、寝落ちする前に俺に色々言ったんだよ。すげぇ可愛いこと。でもお前にこのムラムラ押し付ける状況でも無いしな。はぁ、貸しにしとくから。」  そう言い放つと、さっさとベッド周りのカーテンを開けて扉の方まで歩き出した。  「岳、何食べたい?」  そう言って振り返った新の顔がやっぱり照れてるみたいで、俺は一体何を言ったんだろうと恐ろしくなった。新への貸しがどれくらい膨れるのか考えるのも怖い。  俺は戸惑いながらも、面倒を見てくれる新に甘えてるなと自覚しながら上履きを突っ掛けると、慌てて新の側に歩き寄って言った。 「そーだな。たまにはお好み焼きかな。俺結構焼くの上手いんだ。お前に焼いてやるよ。」  

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