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12 ※
僕が旦 那 様 と呼ばなかったからだろう。――それで機嫌を損ねたケグリ氏は、ポケットの中にあるバイブのスイッチをいじったらしい。
「…っうぁあ、♡ ふ、…ん…う゛く…っ」
僕の体内に沈められたバイブが“フルモード”になった。
ヴィンヴィンとぐぐもった唸り声をあげて、僕のナカの肉を、めちゃくちゃに力強く掻き回してくる。――子宮口をドンドン叩かれ、肉壁をイボの付いた幹でゾリゾリと抉られ、ブルブル強く震えながら、しばらくすると子宮口を、バイブの先端のイボがゴリゴリ丸く抉るように舐め回してくる。
「…ん、…クぅぅ…ッ♡」
勝手に腑抜けた声が出てしまう。
ガクガク跳ねてしまう腰、膝がガクンと抜け、僕はその場にしゃがみ込んで自分の下腹部を押さえた。…上からでもその凶暴な動きがわかる…――僕の目は潤み、体中の肌の表面がじっとりと汗ばみ始め、自然と眉に力が入る。…そんな僕の頭上から降ってきた、ケグリ氏の低く冷ややかな声が、僕を怒鳴りつけてくる。
「なぁにをしとるんだユンファ! 呑気に感じてるんじゃない、早くしろ! また“お仕置き”されたいのか!?」
「…あっ…ご、ごめんなさ…、ごめんなさい、すぐ、……」
僕のお尻を軽く蹴り、ケグリ氏はそのまま上から、たっぷりと僕をおとしめてくる。――とはいえ、そんなのはいつものことだ。…慣れている。
「いや、お前はどうしようもない変態のマゾだからなぁユンファ、ん…? あえて“お仕置き”をされたいと、そうやっていつもわざと反抗しているんだろう…?」
「………、…」
確かに僕は、マゾヒストなのかもしれない。
こうなってから知ったことだ。――前はそうじゃなかったのに、今や痛くされるとなぜか気持ち良くなってしまうし、首を締められるとふわふわして全部忘れられる、荒くされても僕は快感を覚える、それに、酷いことを言われると下半身の全てがきゅうっと切なくなって、挙げ句の果てには、…イってしまう。
ただ、ケグリ氏のこれに関しては、違う。
確実に、僕への当てつけのようなものである。
そうわかっているのに――反論なんか、喉が詰まっていてとてもできない。
「…おい、まんこやアナルにバイブなんぞ挿れて働くとはけしからんぞ。お前が毎朝毎朝、土下座で頼み込んでくるから許してやってるんだ、…人の迷惑ってものを考えろ、このどうしようもないド変態が。…」
「………、…」
確かに、僕は…――変態だ。
もう今は、こう言われても傷付かない。――それが僕の、真 実 だからだ。
「…いやらしいモロ感乳首のピアスまでよそ様にまで見てほしいと、そんないやらしい格好して…恥ずかしくないのか、ユンファ。…そうやって見せ付けて、本当はお客様に乳首つねってほしいだけなんだろうが、お前は。」
「…………」
僕は、…そうなのかもしれない。
不意にお客様に乳首をつねられると、…正直、気持ち良いから。――そうなのかもしれない。…変態だから。
「…全く…このマゾの変態オメガが。――お前の父さんたちが今のユンファを見たら、たいそうガッカリするだろうなぁ…?」
「――…っ!」
我ながら表情が強ばり、奥歯を噛み締めた僕は、――その言葉にだけは、ま だ 傷付いてしまうのだ。
「なんだ、まぁた泣くのか…やっぱりお前は男じゃないな、メスだよメス。…」
「……っ、…っ、…っ」
もう会えない…――。
もう二度と会えない、父さんにも、母さんにも、恥ずかしくて、こんな僕じゃ――もう二度と会えない、会いたくない。
父さんや母さんに、絶対にこんな姿見られたくない、…知ったらどれほど悲しんでくれるだろう。――でも悲しませたくない、…何よりも…とても恥ずかしくて、両親にこんな自分のことがバレてしまったら、それこそ僕は生きていけない。――こんな体で、こんな僕で、どうして父さんたちの前に立てるだろう、
「…ごめんなさい、変態でごめんなさい、許してください、…父さんたちには言わないで、…っお願いします、…っ」
僕は、…ケグリ氏の足元に土下座した。
これら全て…――もちろん本当は、僕が自ら望んだことなんかじゃない。
全部このケグリ氏の命令であり、彼に強要されていることだ。――ケグリ氏が用意した制服が、こうして僕の胸元を透かして、そして不特定多数の他人にそこを見せているのだ。
僕の乳首や乳首につけている、いや…つ け ら れ た ニップルピアスが透けてしまう白いワイシャツは、ケグリ氏に着ろと命令されているものだ。
本当は、…恥ずかしいに決まってる。
――名目上は“スペシャルメニュー”のために――す ぐ 使 え る よ う に 挿れられているバイブにしたって、わざわざ毎朝、ケグリ氏が選んだものを僕の膣やアナルに、彼が挿れているのだ。
酷いときは朝一番で犯され、ナカに射精されたあと「ご主人様の大切なザーメンだ、一滴もまんこからこぼすなよ。こぼしたらお仕置きだ」とバイブやローターで栓をされる。…もちろんそんなのは無理なことだと、彼もわかっていてだ。――理不尽に僕をおとしめ、“お仕置き”をするためだけにそういうことをしてくるのだ。
「…ユンファ…、父さんたちに言われたくなかったら、ほれ、――靴を舐めて綺麗にしろ」
「……、……っ」
とはいっても、正直こ ん な こ と にはもう、僕はすっかり慣れている。
毎日こ う だ。…毎日あらぬことでおとしめられ、毎日毎日体をもてあそばれ、犯され、土下座させられ、靴を舐めさせられ――この快感に耐えながら、時折いたずらにこうして強められる快感に耐えながら、僕は毎朝、開店前の作業を十時までには終わらせなければならない。
それができなければ、僕はケグリ氏に“お仕置き”をされてしまうのだ。――毎日その快感に耐えながら仕事をしなければならない。毎日毎日いやらしい目で見られ、“スペシャルメニュー”の注文をこなし、毎日…毎日…毎日……此処で僕は、多くの人に身も心も犯される日々を過ごしている。
「…もっとベロベロ舐めんか、それじゃ綺麗にならんだろうが! この役立たずのオメガめが。」
「……ぅ…っ、ごめん、なさい……」
顔を蹴られても痛くない。
僕は、感情のない人形だからだ。
都合のいい道具だ。――従順な家畜だからだ。
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